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【みんな生きている】拉致問題セミナー編/産経新聞

北朝鮮による拉致被害者の家族会と支援組織「救う会」、超党派の国会議員でつくる拉致議連が3月3日、東京都千代田区参院議員会館セミナーを開いた。拉致問題を含む北朝鮮の人権侵害を調べていた国連調査委員会(COI)の報告書が2月に公表されたことを受け、韓国とタイの被害者家族も参加。拉致問題解決のため、何をすべきかについての議論が行われた。


北朝鮮への最強カード

国連調査委の報告書では、拉致問題についても多くのページが割かれ、北朝鮮の行為を「人道に対する罪」と断じた。その上で、国連安全保障理事会に対し、国際刑事裁判所(ICC)への付託、または特別法廷の設置を促した。報告書は3月17日の国連人権理事会に提出され、その後に決議が採択される見込み。
セミナーでは、拉致問題解決のために調査委の報告書をどう活用すべきかについて議論が行われ、国際人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」日本代表の土井香苗弁護士、救う会の西岡 力会長たちが意見を述べた。
報告書について「100点満点」と評価する土井弁護士は今後望まれる最高のシナリオとして、安保理による経済制裁と刑事訴追を含めた責任追及を挙げた。


■対中打開策、識者が示す選択肢とは

北朝鮮にプレッシャーを与えるため、鍵を握る安保理。だが常任理事国として拒否権を持つ中国は北朝鮮と関係が深く、ICC付託への「壁」となることは十分に考えられる。
中国への対抗策として、土井弁護士は調査委の報告書に記されている特別法廷の設置を挙げた。国連の特別法廷は常設の裁判所ではなく、これまでにカンボジア戦争犯罪等を裁くために設置された例がある。
「今まで国際社会がまったくといっていいほど考えていなかったオプション(選択肢)を示してくれた。特別法廷は総会でもつくれると脚注などを駆使しながら提示してくれている」。
土井弁護士はそう話し、

「中国のある意味破廉恥な抵抗に屈してはならない。『安保理であなたがどうしても嫌というならその次の道を取るよ』というぐらいの強い決意を持って、国際社会は中国と交渉していかないといけない」

と訴えた。
土井弁護士の発言を受け、司会を務めていたジャーナリストの櫻井よしこさんは

「(中国が)21世紀最大のトラブルメーカーであるというふうに私は思っている。なんとか中国に対して『あなたたちがやっているのは間違いなんですよ』ということを突きつけるだけの世論を盛り上げていかないといけない」

と語った。
救う会の西岡会長は中国に対する説得材料として過去の例を挙げた。
2003年のイラク戦争の根拠の一つとなった2002年の安保理決議で、「拉致したクウェート人を返せという国連の決議が出ているのをイラクが無視したのを遺憾として、軍事制裁した。このとき中国は拒否権を使わなかった」
(西岡会長)
2002年の安保理での中国の対応についてそう説明した西岡会長は

「『前例があるじゃないか』と(中国に)突きつけることができるのではないか」

と提案した。


■最大の圧力は世論

セミナーでは中国への対抗策だけでなく、今後国際世論を高める必要があるとの意見も出された。
北朝鮮国内で昨年12月、中国との関係が深かった張成沢(チャンソンテク)前国防副委員長が粛清され、中国との関係に齟齬が生まれているとされる。拉致議連幹事長の松原 仁衆院議員は現在を好機ととらえ、

北朝鮮が孤立感を深めているタイミングで報告書が出た」

と分析した。
その上で、

「最も重要なのは世論の盛り上がりであり、日本国内の多くの皆さんのほとばしる思いが問題解決に向かっての最大の圧力になる。その思いを日本と世界が持つことが最大の圧力になる」

と世論啓発の必要性を訴えた。


■韓国、タイの拉致被害者家族も進展に期待

セミナーには、日本の拉致被害者の家族のほか、韓国とタイからも家族が参加した。
父親を1972年に拉致され、韓国人拉致被害者家族でつくる「拉北者家族協議会」事務局長を務めるアン・ビョンスンさん(47歳)は

「今回の調査委員会の報告書を土台として私たちも全世界の方と協力して活動したい」

と話した。
1978年にマカオから拉致されたタイ人拉致被害者、アノーチャー・パンジョイさん(拉致被害時23歳)の甥・バンジョン・パンジョイさん(44歳)は

「報告書が出たことを通じて、私のおばであるアノーチャーの帰国、他の国の拉致被害者全員の帰国の大きな足がかりになったのではないか」

と今後の拉致問題進展に期待した。
横田めぐみさん(拉致被害時13歳)の母・早紀江さん(78歳)は

「やっとこのような大きなところまでこの問題が展開されるようになった」

と話し、祈るように訴えた。
「何か不思議な奇跡が起きてほしい。本当にここをきっかけに何か動いてほしい」
3月17日の人権理事会への報告書提出を受け、国連はどう動くのか。
拉致被害者の家族たちは次の展開を注視している。

◆昭和52(1977)年11月15日
少女拉致容疑事案
被害者:横田めぐみさん(拉致被害時13歳)
新潟市において下校途中に失踪。
平成16年11月に開催された第3回実務者協議において、北朝鮮側はめぐみさんが1994(平成6)年4月に死亡したとし「遺骨」を提出したが、めぐみさんの「遺骨」とされた骨の一部からは同人のものとは異なるDNAが検出されたとの鑑定結果を得た。
平成18年4月には日本政府の実施したDNA検査により、横田めぐみさんの夫が昭和53年に韓国より拉致された当時高校生の韓国人拉致被害者・金英男(キム・ヨンナム)氏である可能性が高いことが判明した。

※「拉致された人たちが家族のところに帰るのは人間として当たり前のこと」
横田早紀江さん。拉致被害者横田めぐみさんの母)

◆昭和53(1978)年6月頃
元飲食店店員拉致容疑事案
被害者:田中 実さん(拉致被害時28歳)
欧州に向け出国したあと失踪。
平成14年10月にクアラルンプールで行われた日・朝国交正常化交渉第12回本会談及び平成16年に計3回行われた日・朝実務者協議において我が方から北朝鮮側に情報提供を求めたが、第3回協議において北朝鮮側より北朝鮮に入境したことは確認できなかった旨回答があった。
平成17年4月に田中 実さんが拉致認定されて以降、政府は北朝鮮側に対し即時帰国及び事案に関する真相究明を求めてきているが、これまでに回答はない。

《特定失踪者・金田竜光さんについて》
◆氏名:金田 竜光
(かねだたつみつ)
◆失踪年月日:昭和54(1979)年ごろ
◆生年月日:昭和27(1952)年
◆性別:男
◆当時の年齢:26歳
◆身長:180cm
◆当時の身分:ラーメン店店員
◆当時の住所:兵庫県神戸市東灘区青木
◆失踪場所:神戸市東灘区

【失踪状況】
金田さんは韓国籍
田中 実さん(昭和53年に拉致)と同じ施設で育った。
昭和52年ごろ、田中 実さん拉致実行犯・韓竜大(ハン・ヨンデ)が経営するラーメン店「来大」に就職。昭和53年に田中 実さんを「来大」に紹介し、ともに働く。同年、韓竜大の誘いにより、田中 実さんがオーストリア・ウィーンに出国。
半年ほどして、田中 実さんが差出人になっているオーストリアからの国際郵便を受け取る。その内容は「オーストリアはいいところであり、仕事もあるのでこちらに来ないか」との誘いであった。
田中さんの誘いを受け、打ちあわせと言って東京に向かったが、以後一切連絡がなく、行方不明となる。
連絡がないことを不思議に思った友人が、この間の事情を知る韓竜大に再三説明を求めたが、「知らない」と繰り返す。
その後失踪した2人を知る友人たちの間で「2人は北朝鮮にいる」との噂が広まり、韓竜大に近づく者がいなかった。
救う会兵庫」は平成14年10月に韓竜大、15年7月にその共犯である曹廷楽(チョ・ジョンガリ)についての告発状を兵庫県警に提出している。

《特定失踪者・藤田 進さんについて》
※国連人権理事会が調査要請を受理した事案
◆氏名:藤田 進
(ふじたすすむ)
◆失踪年月日:昭和51(1976)年2月7日
◆生年月日:昭和31(1956)年6月16日
◆性別:男
◆当時の年齢:19歳
◆当時の身分:東京学芸大学教育学部1年生
◆当時の住所:埼玉県川口市南町
◆特徴:
1)家ではあまりしゃべらないタイプ
2)ギターがうまかった
◆失踪場所:埼玉県川口市の自宅

【失踪状況】
失踪当日6:30~7:00頃、以前から言っていた新宿のガードマンのバイトに行くといって服を持って家を出たまま帰らず。
後に新宿にある全ての警備会社に電話で問い合わせたが該当者はいなかった。
脱北者北朝鮮から持ち出した写真が鑑定の結果、藤田 進さんである可能性が極めて高いことが判明。
平成16年1月28日、埼玉県警に告発状提出。



拉致事件、捜査の現状】
北朝鮮による拉致事件を巡り、日本の警察はこれまで実行犯や指示役として北朝鮮の元工作員たち合わせて11人を国際手配しています。
拉致には金正日キム・ジョンイル)総書記が掌握していた対外情報調査部と呼ばれる工作機関が組織的に関わっていた疑いが強いと見て捜査を続けています。
このうち、福井県の地村保志さん・富貴恵さん夫妻を拉致した実行犯として元工作員辛光洙シン・グァンス)容疑者が手配されています。
また、大阪府の原 敕晁さんが拉致された事件では、辛容疑者とともに金吉旭(キム・キルウク)容疑者も共犯者として手配されています。
この他、東京都の久米 裕さん拉致事件では金世鎬(キム・セホ)容疑者が、新潟県曽我ひとみさん拉致事件にはキム・ミョンスク容疑者がそれぞれ関わったとして手配されています。
北海道出身の渡辺秀子さんの子供2人の拉致事件では、工作員グループのリーダー格で北朝鮮にいると見られる洪寿恵(ホン・スヘ)こと木下陽子容疑者が手配されています。
新潟県の蓮池 薫さん・祐木子さん夫妻の拉致事件ではチェ・スンチョル容疑者が実行犯として手配されている他、金総書記が掌握していた対外報調査部と呼ばれる北朝鮮の工作機関の幹部であるハン・クムニョン容疑者とキム・ナンジン容疑者が拉致の実行を指示したとして手配されています。
ハン容疑者たちは工作機関で「指導員」と呼ばれる立場で、辛光洙容疑者たちもこの組織の一員だったことがわかっており、警察は北朝鮮が組織的に拉致を実行した疑いが強いと見て捜査を続けています。
よど号ハイジャック事件のメンバーたちも1980年代にヨーロッパで相次いだ3人の日本人拉致に関わった疑いで国際手配されています。
このうち、有本恵子さん拉致事件では魚本公博(安部公博)容疑者が、石岡 亨さんと松木 薫さん拉致事件ではよど号メンバーの妻の森 順子・若林佐喜子両容疑者がそれぞれ手配されています。