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【みんな生きている】フィル・ロバートソン編(2)

■許可なく国内を移動して処罰された人々

政府が発行する許可証なしに、国内を移動することもまた刑犯罪にあたる。国民は出生地を離れ北朝鮮国内を移動する、或いは国を離れる場合、許可証が必要とされている。しかし、それは北朝鮮が1981年に批准した「市民的及び政治的権利に関する国際規約」第12条「合法的にいずれかの国の領域内にいるすべての者は、当該領域内において、移動の自由及び居住の自由についての権利を有する」という規定に違反している。
しかし、移動許可証は当局への賄賂と引き換えに入手可能だ。
1人の若い女性は、母親が如何にしてタバコを使い、移動許可証付与の正式手続きを回避し、治安担当官と職場の上司から承認書面を得たのかについて話してくれた。
1人の男性は、移動許可証を得るためにタバコかコメを賄賂として提供したこと、そしてそれなしでは逮捕される可能性が高く「警察の留置場に放り込まれた挙句、釈放してもらうのにも賄賂を渡さなければならなかっただろう」と話した。
許可証無しで中国国境を越えた場合も厳しい処罰を招く。北朝鮮国民は、北朝鮮物品を中国の国境地帯で売り、持ち帰った品物を北朝鮮国内で売るために、日々命を危険にさらして国境を越える。これらのやりとりで国民は以前より多くのカネを稼ぐようになり、賄賂を支払ってより自由に移動できる人が増えた。
しかし、賄賂が常に交易業者を守るわけではない。例えば金正日キム・ジョンイル)氏が2011年12月に死亡した後、金正恩キム・ジョンウン)氏率いる新政府は、父の死後喪に服す100日の間、違法に国境を越えようとする者は発見次第射殺すると発表した。
ある北朝鮮女性は、他数人と一緒に豆満江を渡り中国に入ろうとした際、北朝鮮国境警備隊に逮捕された後の出来事を以下のように述べた。
「縛り上げられ、身ぐるみ剥がされて、身体検査された挙句に、軍の基地に連行されました。兵士たちは私たちを罵り、殴り蹴りしました。木の棍棒でも殴られたんです。私の髪の毛をひっぱって、壁に頭を叩きつけたの。怪我で10日間も両目を開けることができませんでした」
彼女はその後尋問のため国家安全保衛部に送られ、最終的には賄賂を支払い釈放されるまで、強制労働のために労働教養所に送られた。
罪を見逃してもらうための北朝鮮警察と治安当局者への賄賂は、益々一般的に行われるようになっている。
しかし、交易業者は、その活動が中国での交易のための一時的な移動であり、韓国との関わりはないことをもっともらしく説明しなければならない。


■携帯電話を使用したことで処罰された人びと

多くの脱北者ヒューマン・ライツ・ウォッチに対し、近年安価な中国製携帯電話が入手可能となり、事態が大きく変わったと話した。国境地帯に住む北朝鮮人の間、そして中国と韓国とも初めて連絡が取れるようになったからだ。
しかし、携帯電話使用の目撃情報だけで、捜査が開始され、逮捕、そして虐待をともなう拘留をもたらす可能性があり、携帯電話の使用は依然として大変危険だ。
ある脱北女性は、韓国にいる叔母に電話をかけたために逮捕され、妊娠中の6ヶ月間拘留され、その間の食事は1回にトウモロコシ20粒しか与えられず、日常的に暴行を受けたと話した。
彼女の母親によれば、家族は熱心に「娘は中国に電話をかけただけ」と当局に主張したそうだ。「北朝鮮から韓国に電話をかけるためには、私たちと韓国にいる人を繋げてくれる中国人と、中国製の携帯電話が必要です…だから娘が電話したのは中国だと強く主張したんです」。母親は更に「北朝鮮では、犯罪を犯したら人として扱われなくなる」と述べた。
最終的に家族は、娘が中国に電話したと証言してくれるよう他の村民にもお願いし、娘の釈放につなげることができた。釈放された10日後、彼女は北朝鮮から逃げ出した。
中国製の携帯電話とチャージされた電話カードを使って、北朝鮮人が韓国に電話をするのを助けていた1人の北朝鮮人女性によると、当局は咸鏡北道の茂山郡で、監視装置を使って電話を見張っていたそうだ。
彼女は「もし名前や住所を話したり使ったりすれば、[当局の]連中が来て逮捕するよ。その後国家安全保衛部に連れていかれ、刑務所に入れられてしまう」と話した。



※「親北勢力は胸に手を当てて考えて欲しい。もし、あなたの子供たちが食べ物に飢えて栄養失調になり、骨だけの痩せ細った体で勉強を諦め、市場のゴミ捨て場を漁っていたら、どんな気持ちになるだろうか。そうせざるを得ない社会に憧れを持つことなど出来るだろうか」
脱北者Aさん。脱北者手記集より)