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【みんな生きている】横田めぐみさん/産経新聞

キム・ウンギョンさんの存在が判明してから今回の面会が実現するまでには、実に11年半もの歳月を要した。横田めぐみさんにウンギョンさんという娘がいることが分かったのは、日・朝首脳会談が開かれた平成14年9月。首脳会談で、北朝鮮はめぐみさんについて「死亡」と説明していた。
「めぐみさん死亡」という北朝鮮の描いたストーリーが、横田さん夫妻とウンギョンさんが面会する上での「壁」だった。ウンギョンさんは、父でめぐみさんの夫だった金英男(キム・ヨンナム)氏からめぐみさんが「病死した」と聞かされている。
そんな状況で横田さん夫妻が訪朝すれば、どうなるのか。北朝鮮当局に「めぐみさん死亡」を既成事実化するために利用される恐れがあった。また、横田さん夫妻の説得に成功しなければ、北朝鮮当局からウンギョンさんが咎められる恐れもある。
逆に、ウンギョンさんの「母は亡くなった」という主張に理解を示せば、「めぐみさん死亡」を夫妻が受け入れたようにとられる。めぐみさんは拉致被害者救出運動のシンボル的存在で、運動に与える影響は計り知れない。他の拉致被害者家族らのことも考え、面会はなかなか実現しなかった。
今回の面会が実現された背景について、横田さん夫妻は3月17日の会見で、拉致被害者松木 薫さん(拉致当時26歳)の母・スナヨさんが今年1月に92歳で亡くなったことに触れ、

「われわれもそういうことになる年齢になっているので、できれば一回でも(面会に)行ってみたいとお願いした」

と明かした。


■国連人権調査委報告書が大きな効果

横田さん夫妻が面会を希望した事情に対し、北朝鮮が面会に応じた背景として指摘されるのが、北朝鮮の人権侵害を調べていた国連人権調査委員会(COI)の存在だ。
拉致被害者の支援組織「救う会」の西岡 力会長は

北朝鮮の人権侵害について、国連調査委員会の報告書は踏み込んで書いており、それが効いた」

と話す。
2月17日に公表された報告書では、日本人を含む外国人拉致や北朝鮮国内の強制収容所等について「人道に対する罪」と認定。国連安全保障理事会国際刑事裁判所(ICC)への付託や特別法廷の設置を勧告した。報告書は3月17日に人権理事会に提出された。
人権を侵害していることを国際社会に大きくアピールされたことがよほどこたえたのだろう。北朝鮮はその後、人権に配慮した行動を見せ始めた。
2月20日には朝鮮戦争北朝鮮と韓国に離散した家族の再会事業が3年4カ月ぶりに、北朝鮮金剛山で実施。3月3日には、終戦前後に北朝鮮地域で死亡した日本人の遺骨収集や墓参問題について話し合う日本と北朝鮮赤十字会談が開かれた。
そして今回の横田さん夫妻とウンギョンさんとの面会。こうした北朝鮮の動きについて、西岡会長は

北朝鮮が非人道的な国ではないことを国際社会に向けてアピールしたかった可能性がある」

と語った。


拉致問題進展への影響は?

今回の面会について、平成14年10月に帰国した拉致被害者や家族たちは「良かった」と声をそろえた。そして、その先の拉致問題進展への期待を口にした。
だが、今後北朝鮮拉致問題で日本への歩み寄りを見せるかは不透明だ。
救う会の西岡会長も

北朝鮮が追い込まれているのは確かだが、拉致問題の進展につながるような具体的な情報を出してくるかは分からない」

と話す。
被害者家族の中にも先行きを懸念する声がある。
横田さん夫妻とウンギョンさんとの面会に関しては、3月3日の中国・瀋陽での日朝赤十字会談に伴う非公式の政府間協議で日本側が提案し、合意した。
有本恵子さん(拉致当時23歳)の母・嘉代子さん(88歳)は

「向こう(北朝鮮)から声をかけてきたら、(北朝鮮が)困っているということだけど、こっち(日本)から頼んで借りをつくったようなら、(拉致問題の進展には)具合が悪いのではないか」

と心配する。
専門家の間でも先行きが難しいとの見方がある。「関係の悪化した中国に石油や食料の輸出を早く再開してもらうため、『だったら日本と仲良くするよ』という戦略の一つで、残念ながら拉致問題を全面解決する決断までしたものではないだろう」と関西大の李英和(リ・ヨンファ)教授はいう。
20日まで行われた日朝赤十字会談に並行して開かれた両国外務省の非公式協議で、平成24年11月を最後に途絶えている日・朝政府間協議を再開することで合意した。横田さん夫妻とウンギョンさんの面会を経て、一つのチャンスが作り出された。
政府間協議を糸口に、政府が拉致問題の進展にどうつなげられるのか。高齢化が進む被害者家族は、政府の取り組みを見守っている。

◆昭和52(1977)年11月15日
少女拉致容疑事案
被害者:横田めぐみさん(拉致被害時13歳)
新潟市において下校途中に失踪。
平成16年11月に開催された第3回実務者協議において、北朝鮮側はめぐみさんが1994(平成6)年4月に死亡したとし「遺骨」を提出したが、めぐみさんの「遺骨」とされた骨の一部からは同人のものとは異なるDNAが検出されたとの鑑定結果を得た。
平成18年4月には日本政府の実施したDNA検査により、横田めぐみさんの夫が昭和53年に韓国より拉致された当時高校生の韓国人拉致被害者・金英男(キム・ヨンナム)氏である可能性が高いことが判明した。

※「拉致された人たちが家族のところに帰るのは人間として当たり前のこと」
横田早紀江さん。拉致被害者横田めぐみさんの母)

◆昭和53(1978)年6月頃
元飲食店店員拉致容疑事案
被害者:田中 実さん(拉致被害時28歳)
欧州に向け出国したあと失踪。
平成14年10月にクアラルンプールで行われた日・朝国交正常化交渉第12回本会談及び平成16年に計3回行われた日・朝実務者協議において我が方から北朝鮮側に情報提供を求めたが、第3回協議において北朝鮮側より北朝鮮に入境したことは確認できなかった旨回答があった。
平成17年4月に田中 実さんが拉致認定されて以降、政府は北朝鮮側に対し即時帰国及び事案に関する真相究明を求めてきているが、これまでに回答はない。

《特定失踪者・金田竜光さんについて》
◆氏名:金田 竜光
(かねだたつみつ)
◆失踪年月日:昭和54(1979)年ごろ
◆生年月日:昭和27(1952)年
◆性別:男
◆当時の年齢:26歳
◆身長:180cm
◆当時の身分:ラーメン店店員
◆当時の住所:兵庫県神戸市東灘区青木
◆失踪場所:神戸市東灘区

【失踪状況】
金田さんは韓国籍
田中 実さん(昭和53年に拉致)と同じ施設で育った。
昭和52年ごろ、田中 実さん拉致実行犯・韓竜大(ハン・ヨンデ)が経営するラーメン店「来大」に就職。昭和53年に田中 実さんを「来大」に紹介し、ともに働く。同年、韓竜大の誘いにより、田中 実さんがオーストリア・ウィーンに出国。
半年ほどして、田中 実さんが差出人になっているオーストリアからの国際郵便を受け取る。その内容は「オーストリアはいいところであり、仕事もあるのでこちらに来ないか」との誘いであった。
田中さんの誘いを受け、打ちあわせと言って東京に向かったが、以後一切連絡がなく、行方不明となる。
連絡がないことを不思議に思った友人が、この間の事情を知る韓竜大に再三説明を求めたが、「知らない」と繰り返す。
その後失踪した2人を知る友人たちの間で「2人は北朝鮮にいる」との噂が広まり、韓竜大に近づく者がいなかった。
救う会兵庫」は平成14年10月に韓竜大、15年7月にその共犯である曹廷楽(チョ・ジョンガリ)についての告発状を兵庫県警に提出している。

《特定失踪者・藤田 進さんについて》
※国連人権理事会が調査要請を受理した事案
◆氏名:藤田 進
(ふじたすすむ)
◆失踪年月日:昭和51(1976)年2月7日
◆生年月日:昭和31(1956)年6月16日
◆性別:男
◆当時の年齢:19歳
◆当時の身分:東京学芸大学教育学部1年生
◆当時の住所:埼玉県川口市南町
◆特徴:
1)家ではあまりしゃべらないタイプ
2)ギターがうまかった
◆失踪場所:埼玉県川口市の自宅

【失踪状況】
失踪当日6:30~7:00頃、以前から言っていた新宿のガードマンのバイトに行くといって服を持って家を出たまま帰らず。
後に新宿にある全ての警備会社に電話で問い合わせたが該当者はいなかった。
脱北者北朝鮮から持ち出した写真が鑑定の結果、藤田 進さんである可能性が極めて高いことが判明。
平成16年1月28日、埼玉県警に告発状提出。



拉致事件、捜査の現状】
北朝鮮による拉致事件を巡り、日本の警察はこれまで実行犯や指示役として北朝鮮の元工作員たち合わせて11人を国際手配しています。
拉致には金正日キム・ジョンイル)総書記が掌握していた対外情報調査部と呼ばれる工作機関が組織的に関わっていた疑いが強いと見て捜査を続けています。
このうち、福井県の地村保志さん・富貴恵さん夫妻を拉致した実行犯として元工作員辛光洙シン・グァンス)容疑者が手配されています。
また、大阪府の原 敕晁さんが拉致された事件では、辛容疑者とともに金吉旭(キム・キルウク)容疑者も共犯者として手配されています。
この他、東京都の久米 裕さん拉致事件では金世鎬(キム・セホ)容疑者が、新潟県曽我ひとみさん拉致事件にはキム・ミョンスク容疑者がそれぞれ関わったとして手配されています。
北海道出身の渡辺秀子さんの子供2人の拉致事件では、工作員グループのリーダー格で北朝鮮にいると見られる洪寿恵(ホン・スヘ)こと木下陽子容疑者が手配されています。
新潟県の蓮池 薫さん・祐木子さん夫妻の拉致事件ではチェ・スンチョル容疑者が実行犯として手配されている他、金総書記が掌握していた対外報調査部と呼ばれる北朝鮮の工作機関の幹部であるハン・クムニョン容疑者とキム・ナンジン容疑者が拉致の実行を指示したとして手配されています。
ハン容疑者たちは工作機関で「指導員」と呼ばれる立場で、辛光洙容疑者たちもこの組織の一員だったことがわかっており、警察は北朝鮮が組織的に拉致を実行した疑いが強いと見て捜査を続けています。
よど号ハイジャック事件のメンバーたちも1980年代にヨーロッパで相次いだ3人の日本人拉致に関わった疑いで国際手配されています。
このうち、有本恵子さん拉致事件では魚本公博(安部公博)容疑者が、石岡 亨さんと松木 薫さん拉致事件ではよど号メンバーの妻の森 順子・若林佐喜子両容疑者がそれぞれ手配されています。