【みんな生きている】申東赫編/毎日新聞
北朝鮮による拉致被害者の横田めぐみさん(拉致被害時13歳)の両親が1月27日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で、脱北者の申東赫(シン・ドンヒョク)さん(31歳)と面会した。
申さんは3月にスイス・ジュネーブで開かれる国連人権理事会で、めぐみさんたち拉致被害者の救出について国際社会に訴えていく考えを示した。
申さんは面会後、報道陣の取材に
「問題を国際社会にアピールするためにお互いに協力していきたい。全世界の代表の前で強力に要求する」
と語った。
めぐみさんの母・早紀江さん(77歳)は
「多くの脱北者、強制収容所から逃れてきた人が団結して国連の場で証言すれば、拉致問題にとっても大きい」
と応じた。
申さんは北朝鮮の政治犯収容所内で生まれ育ち、22歳で脱出するまで一歩も外に出たことがなかったという。収容所の壮絶な実態を描いたドキュメンタリー映画が、3月に日本で公開されるのを前に来日した。
《参考・北朝鮮人権・難民問題国際会議》
【人身売買に虐待。脱北女性の人権を守れ!(2010年)】
北朝鮮による人権侵害を告発し、国際社会とともに改善策を話し合う第10回北朝鮮人権・難民問題国際会議が8月21日、カナダのトロントで行われた。
カナダのオブライ外務政務官は基調演説で
「北朝鮮で行われている恣意的な処罰や、海外からの援助食糧の差別的分配等の人権侵害行為に深い憂慮を表明する」
と述べた。
北韓人権市民連合のユン・ヒョン理事長は
「北朝鮮の人権改善運動を全世界の市民運動として展開するためには、青年たちによる活動が重要だ」
と訴えた。
◆脱北女性、中国で受難
会議では中国国内での脱北女性に対する人権侵害問題が集中的に話し合われた。
韓国関東大学(江原道)の李元雄(イ・ウォンユン)教授(政治外交学)は
「脱北者の70%が女性で、大半が人身売買や強制労働に苦しんでいる。脱北女性は中国内陸部に暮らす農夫の妻として売られて過酷な労働を強いられたり、都市で性的奴隷として働いている」
と指摘した。
会議に出席した脱北女性は
「豆満江(中国名・図們江)を越えると、向こう岸に中国の人身売買犯が待機している。中国で頼る先もなく、公安に摘発されれば強制送還されるため、大半の脱北女性は抵抗も出来ずに性的暴行を受けて売られていく」
と語った。
脱北女性は20代女性で8,000元(約10万1000円)以上、年齢がそれより上の場合は2,000元(約2万5000円)程度で売買されるという。
◆強制送還後の悲惨な収監生活
脱北女性たちは
「強制送還されたあと、北朝鮮の国境地域にある国家安全保衛部に到着するや、ゴム手袋をはめた軍医官に子宮や肛門に手を入れられて現金を隠し持っていないか調べられる。妊婦か処女かも関係ない。そして、立ったり座ったりの動作を100回近くさせられる」
と語った。
キム・ミランさんは
「北朝鮮の保衛部員は中国で捕まった妊婦を見ると、『犬の子を孕んだ』と言って外に連れて行って強制的に中絶させる。堕胎によって監獄で大量に出血しても、まともな治療を受けられずに死んでいく女性が多い」
と証言した。『犬』は中国人のことを指す。
キムさんはまた、
「平安南道の甑山教化所に収監されていた頃、遺体を埋める裏山を『花の山』と呼んでいた。人が死ねば埋葬しなくてはならないが、冬になると地面が凍って深く掘ることが出来ず、人の手足を折って簡単に土を被せるだけだった。その際、蕾のような起伏が出来ていたからだ」
とも話した。
◆脱北者を難民認定すべき
アメリカ・ブルッキングス研究所のロベルタ・コーヘン上級研究員は
「中国は難民の地位に関する条約の締結国でありながら難民認定の手続きがなく、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に対しても中国にいる脱北者との接触を認めていない。他国の難民には中国定住を認める一方で、搾取や人身売買にさらされた脱北者に難民の地位を認めないのは国際法に違反する行為だ」
と指摘した。
会議の出席者は北朝鮮の人権改善に向けて、国連組織とともに脱北者の強制送還等人権侵害の実態を世界各国に伝えていく努力を続けることで一致した。
今回の会議は韓国の北韓人権市民連合とカナダの北朝鮮人権問題に関する青年団体・ハンボイスが共催したもので、アメリカ国立民主主義基金や朝鮮日報社等が後援した。
ハンボイスは韓国系2世の青年たちが中心となり、北朝鮮の人権問題に対する怒りから2007年にトロントで設立された団体で、約200人のメンバーが活動している。
ハンボイスにはユダヤ人3世等、外国人も20%含まれている。
※脱北者Fさんは恵山保衛部に拘禁された当時、中国から強制送還された妊婦がいた。
Fさんは「9ヶ月目に入った妊婦が真夜中に呼び出され、3、4時間後に戻って来ると泣いてばかりいた。病院で中絶の注射を打たれたという。その少しあとで男の子を死産した。赤ちゃんを裸のまま見送ることが出来なかった母親は、垢がついたランニングシャツを脱いで赤ちゃんをくるんだ。そして、プラスチックの盥に入れようとした瞬間、抑えていた怒りを堪えきれず嗚咽した。しかし、保衛部職員は“中国の種子”などと暴言を吐いてその女性の顔を殴った」と記した。
(脱北者の手記集より)
◆昭和52(1977)年11月15日
少女拉致容疑事案
被害者:横田めぐみさん(拉致被害時13歳)
新潟市において下校途中に失踪。
平成16年11月に開催された第3回実務者協議において、北朝鮮側はめぐみさんが1994(平成6)年4月に死亡したとし「遺骨」を提出したが、めぐみさんの「遺骨」とされた骨の一部からは同人のものとは異なるDNAが検出されたとの鑑定結果を得た。
平成18年4月には日本政府の実施したDNA検査により、横田めぐみさんの夫が昭和53年に韓国より拉致された当時高校生の韓国人拉致被害者・金英男(キム・ヨンナム)氏である可能性が高いことが判明した。
【拉致事件、捜査の現状】
北朝鮮による拉致事件を巡り、日本の警察はこれまで実行犯や指示役として北朝鮮の元工作員たち合わせて11人を国際手配しています。
拉致には金正日(キム・ジョンイル)総書記が掌握していた対外情報調査部と呼ばれる工作機関が組織的に関わっていた疑いが強いと見て捜査を続けています。
このうち、福井県の地村保志さん・富貴恵さん夫妻を拉致した実行犯として元工作員の辛光洙(シン・グァンス)容疑者が手配されています。
また、大阪府の原 敕晁さんが拉致された事件では、辛容疑者とともに金吉旭(キム・キルウク)容疑者も共犯者として手配されています。
この他、東京都の久米 裕さん拉致事件では金世鎬(キム・セホ)容疑者が、新潟県の曽我ひとみさん拉致事件にはキム・ミョンスク容疑者がそれぞれ関わったとして手配されています。
北海道出身の渡辺秀子さんの子供2人の拉致事件では、工作員グループのリーダー格で北朝鮮にいると見られる洪寿恵(ホン・スヘ)こと木下陽子容疑者が手配されています。
新潟県の蓮池 薫さん・祐木子さん夫妻の拉致事件ではチェ・スンチョル容疑者が実行犯として手配されている他、金総書記が掌握していた対外報調査部と呼ばれる北朝鮮の工作機関の幹部であるハン・クムニョン容疑者とキム・ナンジン容疑者が拉致の実行を指示したとして手配されています。
ハン容疑者たちは工作機関で「指導員」と呼ばれる立場で、辛光洙容疑者たちもこの組織の一員だったことがわかっており、警察は北朝鮮が組織的に拉致を実行した疑いが強いと見て捜査を続けています。
よど号ハイジャック事件のメンバーたちも1980年代にヨーロッパで相次いだ3人の日本人拉致に関わった疑いで国際手配されています。
このうち、有本恵子さん拉致事件では魚本公博(安部公博)容疑者が、石岡 亨さんと松木 薫さん拉致事件ではよど号メンバーの妻の森 順子・若林佐喜子両容疑者がそれぞれ手配されています。
申さんは3月にスイス・ジュネーブで開かれる国連人権理事会で、めぐみさんたち拉致被害者の救出について国際社会に訴えていく考えを示した。
申さんは面会後、報道陣の取材に
「問題を国際社会にアピールするためにお互いに協力していきたい。全世界の代表の前で強力に要求する」
と語った。
めぐみさんの母・早紀江さん(77歳)は
「多くの脱北者、強制収容所から逃れてきた人が団結して国連の場で証言すれば、拉致問題にとっても大きい」
と応じた。
申さんは北朝鮮の政治犯収容所内で生まれ育ち、22歳で脱出するまで一歩も外に出たことがなかったという。収容所の壮絶な実態を描いたドキュメンタリー映画が、3月に日本で公開されるのを前に来日した。
《参考・北朝鮮人権・難民問題国際会議》
【人身売買に虐待。脱北女性の人権を守れ!(2010年)】
北朝鮮による人権侵害を告発し、国際社会とともに改善策を話し合う第10回北朝鮮人権・難民問題国際会議が8月21日、カナダのトロントで行われた。
カナダのオブライ外務政務官は基調演説で
「北朝鮮で行われている恣意的な処罰や、海外からの援助食糧の差別的分配等の人権侵害行為に深い憂慮を表明する」
と述べた。
北韓人権市民連合のユン・ヒョン理事長は
「北朝鮮の人権改善運動を全世界の市民運動として展開するためには、青年たちによる活動が重要だ」
と訴えた。
◆脱北女性、中国で受難
会議では中国国内での脱北女性に対する人権侵害問題が集中的に話し合われた。
韓国関東大学(江原道)の李元雄(イ・ウォンユン)教授(政治外交学)は
「脱北者の70%が女性で、大半が人身売買や強制労働に苦しんでいる。脱北女性は中国内陸部に暮らす農夫の妻として売られて過酷な労働を強いられたり、都市で性的奴隷として働いている」
と指摘した。
会議に出席した脱北女性は
「豆満江(中国名・図們江)を越えると、向こう岸に中国の人身売買犯が待機している。中国で頼る先もなく、公安に摘発されれば強制送還されるため、大半の脱北女性は抵抗も出来ずに性的暴行を受けて売られていく」
と語った。
脱北女性は20代女性で8,000元(約10万1000円)以上、年齢がそれより上の場合は2,000元(約2万5000円)程度で売買されるという。
◆強制送還後の悲惨な収監生活
脱北女性たちは
「強制送還されたあと、北朝鮮の国境地域にある国家安全保衛部に到着するや、ゴム手袋をはめた軍医官に子宮や肛門に手を入れられて現金を隠し持っていないか調べられる。妊婦か処女かも関係ない。そして、立ったり座ったりの動作を100回近くさせられる」
と語った。
キム・ミランさんは
「北朝鮮の保衛部員は中国で捕まった妊婦を見ると、『犬の子を孕んだ』と言って外に連れて行って強制的に中絶させる。堕胎によって監獄で大量に出血しても、まともな治療を受けられずに死んでいく女性が多い」
と証言した。『犬』は中国人のことを指す。
キムさんはまた、
「平安南道の甑山教化所に収監されていた頃、遺体を埋める裏山を『花の山』と呼んでいた。人が死ねば埋葬しなくてはならないが、冬になると地面が凍って深く掘ることが出来ず、人の手足を折って簡単に土を被せるだけだった。その際、蕾のような起伏が出来ていたからだ」
とも話した。
◆脱北者を難民認定すべき
アメリカ・ブルッキングス研究所のロベルタ・コーヘン上級研究員は
「中国は難民の地位に関する条約の締結国でありながら難民認定の手続きがなく、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に対しても中国にいる脱北者との接触を認めていない。他国の難民には中国定住を認める一方で、搾取や人身売買にさらされた脱北者に難民の地位を認めないのは国際法に違反する行為だ」
と指摘した。
会議の出席者は北朝鮮の人権改善に向けて、国連組織とともに脱北者の強制送還等人権侵害の実態を世界各国に伝えていく努力を続けることで一致した。
今回の会議は韓国の北韓人権市民連合とカナダの北朝鮮人権問題に関する青年団体・ハンボイスが共催したもので、アメリカ国立民主主義基金や朝鮮日報社等が後援した。
ハンボイスは韓国系2世の青年たちが中心となり、北朝鮮の人権問題に対する怒りから2007年にトロントで設立された団体で、約200人のメンバーが活動している。
ハンボイスにはユダヤ人3世等、外国人も20%含まれている。
※脱北者Fさんは恵山保衛部に拘禁された当時、中国から強制送還された妊婦がいた。
Fさんは「9ヶ月目に入った妊婦が真夜中に呼び出され、3、4時間後に戻って来ると泣いてばかりいた。病院で中絶の注射を打たれたという。その少しあとで男の子を死産した。赤ちゃんを裸のまま見送ることが出来なかった母親は、垢がついたランニングシャツを脱いで赤ちゃんをくるんだ。そして、プラスチックの盥に入れようとした瞬間、抑えていた怒りを堪えきれず嗚咽した。しかし、保衛部職員は“中国の種子”などと暴言を吐いてその女性の顔を殴った」と記した。
(脱北者の手記集より)
◆昭和52(1977)年11月15日
少女拉致容疑事案
被害者:横田めぐみさん(拉致被害時13歳)
新潟市において下校途中に失踪。
平成16年11月に開催された第3回実務者協議において、北朝鮮側はめぐみさんが1994(平成6)年4月に死亡したとし「遺骨」を提出したが、めぐみさんの「遺骨」とされた骨の一部からは同人のものとは異なるDNAが検出されたとの鑑定結果を得た。
平成18年4月には日本政府の実施したDNA検査により、横田めぐみさんの夫が昭和53年に韓国より拉致された当時高校生の韓国人拉致被害者・金英男(キム・ヨンナム)氏である可能性が高いことが判明した。
【拉致事件、捜査の現状】
北朝鮮による拉致事件を巡り、日本の警察はこれまで実行犯や指示役として北朝鮮の元工作員たち合わせて11人を国際手配しています。
拉致には金正日(キム・ジョンイル)総書記が掌握していた対外情報調査部と呼ばれる工作機関が組織的に関わっていた疑いが強いと見て捜査を続けています。
このうち、福井県の地村保志さん・富貴恵さん夫妻を拉致した実行犯として元工作員の辛光洙(シン・グァンス)容疑者が手配されています。
また、大阪府の原 敕晁さんが拉致された事件では、辛容疑者とともに金吉旭(キム・キルウク)容疑者も共犯者として手配されています。
この他、東京都の久米 裕さん拉致事件では金世鎬(キム・セホ)容疑者が、新潟県の曽我ひとみさん拉致事件にはキム・ミョンスク容疑者がそれぞれ関わったとして手配されています。
北海道出身の渡辺秀子さんの子供2人の拉致事件では、工作員グループのリーダー格で北朝鮮にいると見られる洪寿恵(ホン・スヘ)こと木下陽子容疑者が手配されています。
新潟県の蓮池 薫さん・祐木子さん夫妻の拉致事件ではチェ・スンチョル容疑者が実行犯として手配されている他、金総書記が掌握していた対外報調査部と呼ばれる北朝鮮の工作機関の幹部であるハン・クムニョン容疑者とキム・ナンジン容疑者が拉致の実行を指示したとして手配されています。
ハン容疑者たちは工作機関で「指導員」と呼ばれる立場で、辛光洙容疑者たちもこの組織の一員だったことがわかっており、警察は北朝鮮が組織的に拉致を実行した疑いが強いと見て捜査を続けています。
よど号ハイジャック事件のメンバーたちも1980年代にヨーロッパで相次いだ3人の日本人拉致に関わった疑いで国際手配されています。
このうち、有本恵子さん拉致事件では魚本公博(安部公博)容疑者が、石岡 亨さんと松木 薫さん拉致事件ではよど号メンバーの妻の森 順子・若林佐喜子両容疑者がそれぞれ手配されています。