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【みんな生きている】西日本拉致事件編

《『産経新聞』が伝える西日本の拉致事件

■九州、山口でも拉致被害が頻発

北朝鮮による拉致問題が、安倍晋三首相の「現政権で解決する」という強い決意を受け、日・朝政府レベルでジワリと動き出した。
朝鮮半島に近く海岸線が複雑な九州・山口地方は拉致事件の主要な舞台。政府が認定した拉致被害者が3人、拉致の疑いがある特定失踪者が42人いる他、住民の行方不明が相次ぎ「神隠し」と恐れられた海岸も数多く存在するだけに、全面解決への期待は大きい。


■「浜辺の松林に近づくな。神隠しにあうぞ…」

福岡市中央区福浜から早良区百道浜にかけては、今でこそ埋め立てにより近代的なビルが林立する福岡市の副都心だが、昭和60年ごろまでは民家はまばらで松林と砂浜が続いていた。
この海辺で40年~50年代に、漁師たちが突然姿を消す事案が相次ぎ、付近の住民は子供にこう言い聞かせていたという。
これは北朝鮮が盛んに拉致事件を敢行した時期とピタリと重なる。当時、北朝鮮による犯行とはほとんど認知されておらず、地元住民は行方不明者が出ても「駆け落ちか」等と考え、本格的に捜査されないケースが多かったという。
北朝鮮金正日キム・ジョンイル)総書記(故人)が拉致を認め、謝罪したのは平成14年秋の小泉純一郎首相(当時)の電撃訪朝の時だった。以後、拉致事件は全国でクローズアップされるようになった。
救う会福岡」幹事長を務める水城四郎福岡市議はこう断じる。

「『松林で麻袋をかけられた人が連れ去られるのを見た』『当時は怖くて黙っていたが、今思うと北朝鮮の拉致ではないか』-等の新証言も寄せられています。福岡市民にとって拉致事件は人ごとではありません。それどころか、主要な犯行現場だったのではないかと考えています」

神隠しの浜」は福岡だけではない。鹿児島県日置市吹上浜周辺の薩摩半島西海岸でも、昭和40~50年代に「夜遅く浜辺を歩くと神隠しにあう」「どこか遠い国に連れて行かれる」等と囁かれていた。
吹上浜は、政府認定の拉致被害者である市川修一さん(拉致被害時23歳)と増元るみ子さん(拉致被害時24歳)の拉致現場でもある。
市川さん・増元さんが姿を消した昭和53年8月12日夕、吹上浜に乗り上げる不審な灰色の小型船とゴムボートを目撃し、カタコトの日本語を話す人物に話しかけられたという証言もある。
拉致被害者の掘り起こしに取り組む特定失踪者問題調査会(調査会)の森山博行理事(元鹿児島市議)は20歳前後だった1960年ごろ、海岸線をドライブ中、車載ラジオをチューニングしていると朝鮮語で数字を無機質に読み上げる気味の悪い音声を何度も聞いた。
今、森山氏は悔しそうに、こう語る。

「あの音は乱数表を使った暗号でしょう。北朝鮮から工作員らに拉致の指令を送っていたのだと思います。政府がもっと真剣に事件解決に取り組んでいたら被害者はずっと減っていたのではないでしょうか」

政府に認定された拉致被害者は計17人。このうち市川さんと増元さんに加え、宮崎市の青島海岸で消息を断った原 敕晁さん(拉致被害時43歳)の3人が九州で拉致されたが、拉致の疑いがある特定失踪者はずっと多い。
調査会が平成15年以降調査した結果、特定失踪者と認定したのは全国で約470人。このうち九州・山口8県は、

▽福岡県・11人
▽鹿児島県・9人
山口県・7人
▽宮崎県・6人
長崎県・5人
大分県・3人
熊本県・1人
佐賀県・0人

の計42人で1割近い。
東京・大阪等の大都市部や、横田めぐみさん(拉致被害時13歳)たちの拉致事件の現場となった新潟県北陸地方に次ぐ多さだ。
42人中、北朝鮮の元工作員が「北朝鮮で見た」と証言した北九州市八幡東区加藤久美子さん(失踪当時22歳)たち十数人は「拉致被害者である可能性が極めて濃厚」だという。
調査会によると、失踪から長年進展がなかったため、家族がすでにあきらめて調査を依頼しなかったケースも多く、拉致の可能性がある「神隠し」事案はまだまだあるという。
安倍晋三首相は、初当選前から拉致問題に取り組み、平成10年の拉致議連発足時からの主要メンバーだけに拉致問題解決への意気込みは並々ではない。小泉氏の首相秘書官だった飯島 勲内閣官房参与の訪朝(5月14~17日)も安倍首相の意向を汲んだとされる。それだけに拉致被害者の家族たちの期待は大きい。
水城氏もこう語る。

拉致問題に本当に熱心な国会議員はそれほど多くないが、安倍首相は間違いなく熱心な一人です。北朝鮮金正恩キム・ジョンウン)第1書記に代替わりしたので今が大きなチャンス。最後のチャンスかも知れません。近く大きな進展があるのではないか」

また、長年拉致問題に取り組んできた日本維新の会の三宅 博衆院議員(衆院比例近畿)も

「被害者を自力で取り返せない国家に主権は守れない。解決への道のりは遠いが、着実に次の段階に進んでほしい」

増元るみ子さんの弟で拉致被害者家族会の増元照明事務局長も

「日本が主導しなければ、(拉致被害に遭った)他の国も積極的に取り組むことにならない」

と語り、首相に熱い期待を寄せた。

◆昭和53(1978)年8月12日
アベック拉致容疑事案
被害者:増元るみ子さん(拉致被害時24歳)
被害者:市川修一さん(拉致被害時23歳)
「浜に夕日を見に行く」と言って出かけたまま失踪。
北朝鮮側は、1979(昭和54)年7月に2人は結婚し、市川修一さんは同年9月に心臓麻痺で死亡し、増元るみ子さんは1981(昭和56)年に心臓麻痺で死亡したとしているが、これを裏付ける資料等の提供はなされていない。

◆昭和52(1977)年11月15日
少女拉致容疑事案
被害者:横田めぐみさん(拉致被害時13歳)
新潟市において下校途中に失踪。
平成16年11月に開催された第3回実務者協議において、北朝鮮側はめぐみさんが1994(平成6)年4月に死亡したとし「遺骨」を提出したが、めぐみさんの「遺骨」とされた骨の一部からは同人のものとは異なるDNAが検出されたとの鑑定結果を得た。
平成18年4月には日本政府の実施したDNA検査により、横田めぐみさんの夫が昭和53年に韓国より拉致された当時高校生の韓国人拉致被害者・金英男(キム・ヨンナム)氏である可能性が高いことが判明した。

◆昭和55(1980)年6月中旬
辛光洙シン・グァンス)事件
被害者:原 敕晁さん(拉致被害時43歳)
宮崎県内で発生。
本件については、北朝鮮工作員辛光洙シン・グァンス)が韓国当局に対し、原さん拉致を認める証言をしている。
捜査当局は辛光洙について、これまで原さんに成りかわった容疑で逮捕状の発付を得て国際手配するとともに、政府として北朝鮮側に身柄の引渡しを要求してきたが、平成18年4月には、新たに拉致容疑の主犯として逮捕状が発付されている。
北朝鮮側は身柄の引渡しに応じていないどころか、同人を「英雄」として称えている。また、捜査当局は原さん拉致容疑の共犯者である金吉旭(キム・キルウク)についても逮捕状の発付を得ており、国際手配を行うなどの所要の措置を講じている。
北朝鮮側は、原さんは1984(昭和59)年に田口八重子さんと結婚し、1986(昭和61)年に肝硬変で死亡したとしているが、これを裏付ける資料等の提供はなされていない。

《特定失踪者・加藤久美子さんについて》
◆氏名:加藤 久美子
(かとうくみこ)
◆失踪年月日:昭和45(1970)年8月8日
◆生年月日:昭和23(1948)年1月1日
◆性別:女性
◆当時の年齢:22歳
◆身長:155cm
◆体重:47kg
◆当時の身分:事務員
◆特徴:首の後ろに水疱瘡の跡8mm
◆特技:電話交換扱い
◆失踪場所:福岡県北九州市八幡区自宅近くの電停

【失踪状況】
妹と一緒に家を出て徒歩10分くらい離れた旧西鉄路面電車の大倉電停で別れたのが最後。その後消息不明。
いつも通りの服装だったので、小倉にある会社へ向かったと思われる。
週末に編み物の先生とお茶会に行くので着物を出しておいてという話をしていた。
北朝鮮工作員安明進(アン・ミョンジン)氏が、「1989~1990年、金正日政治軍事大学横田めぐみさんらと一緒にいた女性に似ている」と証言。
平成16年1月29日、八幡東署に告発状提出。

《特定失踪者・尾上民公乃さんについて》
◆氏名:尾上 民公乃
(おのうえみこの)
◆失踪年月日:昭和62(1987)年6月6日
◆生年月日:昭和41(1966)年11月26日
◆性別:女性
◆当時の年齢:20歳
◆身長:161cm
◆体重:49kg
◆当時の身分:スナックのアルバイト
◆失踪場所:大阪府南区(現中央区)心斎橋

【失踪状況】
5日午後11時30分頃、大阪市北区内のスナックへ行った後、友人の車に同乗。
その友人は午前3時50分頃心斎橋の路上に停車、エンジンをかけたまま尾上さんを助手席に残し、近くのビルの飲食店にいる知人と連絡をとりに行った。
その友人が約30分後に戻ると車ごと消えていた。
尾上さんは免許を取得したばかりで運転歴殆どなし。
翌朝、福岡市博多港の沖浜町中央埠頭東側岸壁から乗っていた車が海中に落ちるところを釣り人が目撃。
ドアはいずれも閉まっていたが助手席の窓は開いていた。
遺体は発見されていない。
車内には友人のセカンドバックがあったが、なくなっていた。
北朝鮮にいるとの不確定情報がある。



拉致事件、捜査の現状】
北朝鮮による拉致事件を巡り、日本の警察はこれまで実行犯や指示役として北朝鮮の元工作員たち合わせて11人を国際手配しています。
拉致には金正日キム・ジョンイル)総書記が掌握していた対外情報調査部と呼ばれる工作機関が組織的に関わっていた疑いが強いと見て捜査を続けています。
このうち、福井県の地村保志さん・富貴恵さん夫妻を拉致した実行犯として元工作員辛光洙シン・グァンス)容疑者が手配されています。
また、大阪府の原 敕晁さんが拉致された事件では、辛容疑者とともに金吉旭(キム・キルウク)容疑者も共犯者として手配されています。
この他、東京都の久米 裕さん拉致事件では金世鎬(キム・セホ)容疑者が、新潟県曽我ひとみさん拉致事件にはキム・ミョンスク容疑者がそれぞれ関わったとして手配されています。
北海道出身の渡辺秀子さんの子供2人の拉致事件では、工作員グループのリーダー格で北朝鮮にいると見られる洪寿恵(ホン・スヘ)こと木下陽子容疑者が手配されています。
新潟県の蓮池 薫さん・祐木子さん夫妻の拉致事件ではチェ・スンチョル容疑者が実行犯として手配されている他、金総書記が掌握していた対外報調査部と呼ばれる北朝鮮の工作機関の幹部であるハン・クムニョン容疑者とキム・ナンジン容疑者が拉致の実行を指示したとして手配されています。
ハン容疑者たちは工作機関で「指導員」と呼ばれる立場で、辛光洙容疑者たちもこの組織の一員だったことがわかっており、警察は北朝鮮が組織的に拉致を実行した疑いが強いと見て捜査を続けています。
よど号ハイジャック事件のメンバーたちも1980年代にヨーロッパで相次いだ3人の日本人拉致に関わった疑いで国際手配されています。
このうち、有本恵子さん拉致事件では魚本公博(安部公博)容疑者が、石岡 亨さんと松木 薫さん拉致事件ではよど号メンバーの妻の森 順子・若林佐喜子両容疑者がそれぞれ手配されています。