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【みんな生きている】エアメール編

《『産経新聞』が伝えるよど号ルート拉致事件を結ぶエアメール》

リクルート事件の発覚や「なだしお」事故、青函トンネルの開業、瀬戸大橋の開通…
長渕 剛さんのヒット曲「乾杯」が街中に流れ、「オバタリアン」「ママドル」といった言葉が流行した。25年前の昭和63年はそんな年だった。
ソウル五輪もあった。
東西冷戦構造が続く中、前回のロサンゼルス五輪は東側諸国が、前々回のモスクワ五輪は西側諸国がボイコットしたため、12年ぶりにアメリカとソ連(当時)が出場した大会だった。
この五輪を妨害する動きが前年から発覚し始めた。
よど号犯の田宮高麿(故人)と、日本赤軍の丸岡 修(同)が北京で接触。丸岡は日本に向かう」
第三国の情報機関から警察当局に通報があった。
日航機「よど号」を乗っ取り北朝鮮に渡ったメンバーたちと、マレーシア・クアラルンプールのアメリカ領事館占拠事件(1975年)やダッカ日航機乗っ取り事件(1977年)等世界各地でテロを仕掛けてきた日本赤軍は、ともに共産主義者同盟(共産同)赤軍派を源流とする。その幹部が日本潜入を企てたのだ。


■テロ警戒で行動捕捉

偽造旅券で日本に入ってきた丸岡元受刑者を確認した警察当局は昭和62年11月21日、東京都内の公衆電話ボックスで身柄を押さえた。丸岡元受刑者はソウル行きの航空予約券と韓国でのテロを示唆するメモを所持していた。
その8日後、大韓航空機爆破事件が発生する。実行犯の男女は日本人の偽造旅券を所持していた。男は自殺したが、女の身柄を確保、北朝鮮工作員だった。
ソウル五輪の妨害が目的」と供述した金賢姫(キム・ヒョンヒ)元工作員(51歳)は、拉致被害者の日本人女性「李恩恵(リ・ウネ)」から日本人化教育を受けたことを告白。その後の日本の警察当局の調べで、「李恩恵」は田口八重子さん(拉致被害時22歳)と判明した。
ソウル五輪妨害は現実のものとなりつつあった。
警察関係者は振り返る。

「あれがきっかけで、各国の情報交換が進み、欧州に頻繁に出入りしている『マル対』(行動確認対象者)の足跡や写真がどっさりきたんだ」

よど号犯や妻たちの動きは詳細に捕捉されていた。昭和63年5月、グループの勢力拡大等を目的に日本に潜伏していたよど号犯・柴田泰弘元メンバー(故人)と、別に活動していた元妻(57歳)が相次いで逮捕された。


■事情あって北朝鮮

《長い間、心配を掛けて済みません。私と松木さんは、元気です。途中で合流した有本恵子君供々、三人で助け合って平壌市で暮らして居ります。事情あって、欧州に居た私達は、こうして北朝鮮にて長期滞在するようになりました》
(原文のママ)

ソウル五輪開幕11日前の昭和63年9月6日、8年前に欧州で失跡した札幌市の石岡 亨さん(拉致被害時22歳)の実家にエアメールが届いた。一緒に消息を絶った熊本市松木 薫さん(拉致被害時26歳)、その3年後に英国留学中に忽然と姿を消した神戸市の有本恵子さん(拉致被害時23歳)のことも記した手紙には、3枚の写真が同封されていた。石岡さんと、有本さん、赤ちゃんの写真だった。松木さんの写真はなかった。
消印はポーランド
石岡さんの手紙は北朝鮮人を通じポーランド人に渡り、投函されたとされる。
石岡さんの足跡をたどると、失踪前、よど号犯の妻たちと欧州で知り合っていた。
その石岡さんは「やはり」北朝鮮にいた。石岡さんの旅券をベースにした偽造旅券を日本赤軍のメンバーが昭和58、昭和59年にかけて使用している。
北朝鮮、拉致、よど号犯、日本赤軍
「点」が「線」でつながっていくことを警察関係者は実感していった。
北朝鮮側は、石岡さんと有本さんは「1988(昭和63)年11月に死亡」と、納得できる説明もなく、伝えてきている。

よど号ルート拉致被害者について》
◆昭和55(1980)年5月頃
欧州における日本人男性拉致容疑事案
被害者:石岡 亨さん(拉致被害時22歳)
被害者:松木 薫さん(拉致被害時26歳)
2人とも欧州滞在中の昭和55年に失踪。
昭和63年に石岡さんから日本の家族に出した手紙(ポーランドの消印)が届き、石岡さん、松木さん、そして有本恵子さんが北朝鮮に在住すると伝えてきた。
北朝鮮側は、石岡 亨さんは1988(昭和63)年11月にガス事故で有本恵子さんと共に死亡したとしているが、これを裏付ける資料等の提供はなされていない。
また、同様に松木 薫さんについても、1996(平成8)年8月に交通事故で死亡したとして、平成14年9月及び平成16年11月に開催された第3回日朝実務者協議と2回にわたり、北朝鮮側から松木さんの「遺骨」の可能性があるとされるものが提出されたが、そのうちの一部からは、同人のものとは異なるDNAが検出されたとの鑑定結果を得た。
捜査当局は拉致実行犯である「よど号」犯人の妻・森 順子及び若林(旧姓:黒田)佐喜子について、平成19年6月に逮捕状の発付を得て国際手配するとともに、政府として北朝鮮側に身柄の引渡しを要求している。

◆昭和58(1983)年7月頃
欧州における日本人女性拉致容疑事案
被害者:有本恵子さん(拉致被害時23歳)
欧州にて失踪。
よど号」犯人の元妻は、北朝鮮当局と協力して有本さんを拉致したことを認めている。
捜査当局は拉致実行犯である「よど号」犯人の魚本(旧姓安部)公博について、平成14年9月逮捕状の発付を得て国際手配するとともに、政府として北朝鮮側に身柄の引き渡しを要求しているが北朝鮮側はこれに応じていない。
北朝鮮側は、有本さんは1988(昭和63)年11月にガス事故で石岡 亨さんと共に死亡したとしているが、これを裏付ける資料等の提供はなされていない。



拉致事件、捜査の現状】
北朝鮮による拉致事件を巡り、日本の警察はこれまで実行犯や指示役として北朝鮮の元工作員たち合わせて11人を国際手配しています。
拉致には金正日キム・ジョンイル)総書記が掌握していた対外情報調査部と呼ばれる工作機関が組織的に関わっていた疑いが強いと見て捜査を続けています。
このうち、福井県の地村保志さん・富貴恵さん夫妻を拉致した実行犯として元工作員辛光洙シン・グァンス)容疑者が手配されています。
また、大阪府の原 敕晁さんが拉致された事件では、辛容疑者とともに金吉旭(キム・キルウク)容疑者も共犯者として手配されています。
この他、東京都の久米 裕さん拉致事件では金世鎬(キム・セホ)容疑者が、新潟県曽我ひとみさん拉致事件にはキム・ミョンスク容疑者がそれぞれ関わったとして手配されています。
北海道出身の渡辺秀子さんの子供2人の拉致事件では、工作員グループのリーダー格で北朝鮮にいると見られる洪寿恵(ホン・スヘ)こと木下陽子容疑者が手配されています。
新潟県の蓮池 薫さん・祐木子さん夫妻の拉致事件ではチェ・スンチョル容疑者が実行犯として手配されている他、金総書記が掌握していた対外報調査部と呼ばれる北朝鮮の工作機関の幹部であるハン・クムニョン容疑者とキム・ナンジン容疑者が拉致の実行を指示したとして手配されています。
ハン容疑者たちは工作機関で「指導員」と呼ばれる立場で、辛光洙容疑者たちもこの組織の一員だったことがわかっており、警察は北朝鮮が組織的に拉致を実行した疑いが強いと見て捜査を続けています。
よど号ハイジャック事件のメンバーたちも1980年代にヨーロッパで相次いだ3人の日本人拉致に関わった疑いで国際手配されています。
このうち、有本恵子さん拉致事件では魚本公博(安部公博)容疑者が、石岡 亨さんと松木 薫さん拉致事件ではよど号メンバーの妻の森 順子・若林佐喜子両容疑者がそれぞれ手配されています。