【みんな生きている】金正恩編
《韓国の専門家たちが金第１書記の「新年の辞」を分析》
北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）朝鮮労働党第１書記は１月１日午前、肉声で新年の辞を発表した。北朝鮮の最高権力者が肉声で新年の辞を発表するのは、１９９４年１月１日以来１９年ぶりのことだ。
金第１書記は１日、新年の辞で「南側の同胞たちと（中略）外国の友人たちに、新年のあいさつを送る」と語った。
北朝鮮に詳しい専門家たちは、このような挨拶を行なったこと自体「異例の事」と語った。また、金第１書記は「同族対決でもたらされるのは戦争だけ。国の分裂を終息させ、統一を成し遂げる上で重要な問題は、北と南の対決状態を解消すること」と語った。
北朝鮮の新年の辞や新年社説を２０年以上も分析してきた治安政策研究所の柳東烈（ユ・ドンヨル）先任研究官は
「お決まりのように取り上げていた在韓米軍撤収や連邦制統一の主張も入っておらず、意外。北朝鮮歴代の新年の辞の中では最も穏健」
と評価した。
北朝鮮が、韓国の歴代大統領選直後に発表した新年の辞または新年共同社説から対南（韓国）・対米中傷を省くことはほとんどない。
李明博（イ・ミョンバク）政権発足直前の２００８年の新年社説では「同族を『主敵』にする対決観念を変えなければならない」と記した。積極的な南北和解・協力を目指していた金大中（キム・デジュン）政権発足直後の１９９８年１月にも「単に政権が交代し大統領が変わっただけでは、南朝鮮（韓国）で変化するものは何もない」と主張した。
■「１０・４宣言を守れ」
最も穏健と評価されている今回の新年の辞について、統一研究院北韓研究センターは１日
「朴槿恵（パク・クンヘ）政権発足を控え、南北関係改善に対する期待感を表わした」
と評価した。
朴槿恵氏サイドの関係者は
「こちら側の出方を見ようという観点からのものではあるが、とにかく良いシグナル。敢えて消極的に解釈する必要はないとみられる」
と語った。
しかし金第１書記は、何の条件もなしに「和解と話し合い」に言及したわけではない。金第１書記は、南北関係前進のための「根本前提」として「北南共同宣言の尊重と履行」を挙げ「（２度の南北首脳会談の合意事項である）６・１５共同宣言と１０・４宣言を徹底して理解するための闘争を積極的に繰り広げなければならない」と語った。
５年前には李明博政権引継委に１０・４宣言の履行を非公式に打診しており、今回は北の権力者が直接肉声で要求してきたわけだ。それほどまでに、韓国側の大規模な対北朝鮮経済協力を望んでいるという意味でもある。
■「経済建設が最も重要」
金第１書記は１日「経済強国建設は、社会主義強盛国家建設の偉業を遂行する中で前面に出てきた最も重要な課業」と語るなど「経済建設」と「人民の生活向上」をことのほか強調した。
通常、新年の辞は「前年の総和（評価）、導入部、政治、軍事、経済、党・労働団体、対南、国際、結語」の順で展開する。
しかし今回はこの形式を破り、政治よりもまず経済に言及した。また新年の辞で使われた単語を分析すると「人民」と「経済」がそれぞれ５９回と２４回で、最も多かった。「金日成（キム・イルソン）」（１１回）「金正日（キム・ジョンイル）」（１４回）「社会主義」（１８回）「主体（チュチェ）」（１３回）「先軍」（６回）等を圧倒した。
韓国高麗大学の柳浩烈（ユ・ホヨル）教授は
「金正恩第１書記が政権を樹立して最初の年となった昨年、経済問題がうまく解決しなかったという証拠」
と語った。
金第１書記も、新年の辞で「新年２０１３年は、社会主義強盛国家建設の転換的局面を開いていく、壮大な創造と変革の年」と語った。「２０１２年強盛国家建設」という目標の達成に失敗したことを自ら認めたわけだ。
■「先端武装装備はもっと作るべき」
金第１書記は昨年の新年共同社説で１４回も登場した「先軍」という表現を、今回は６回しか使わなかった。
韓国梨花女子大学のチョ・ドンホ教授は
「金正日総書記の時代には、先軍が国政全般を総括する概念として使われていたが、今では国防分野に局限された感じ。先軍が評価を下げてきている」
と語った。
しかし、金第１書記は「われわれ式の先端武装装備をより多く作らなければならない」とも語った。
北朝鮮に詳しい専門家は
「核や長距離ミサイルなどの開発を続けるという意志を表明したもの」
と説明した。
■金日成主席の真似は続く
生前の金日成主席は、新年の辞を毎年自ら朗読していたが、公開演説を忌避していた金正日総書記は『労働新聞』『朝鮮人民軍』『青年前衛』の三紙に「新年共同社説」を掲載するという手法を用いた。
金第１書記が肉声で新年の辞を発表する手法を選んだことに対し、韓国統一部（省に相当）の関係者は
「祖父の故・金日成主席を模倣する意図がある」
と語った。
一方、１日に朝鮮中央テレビが放送した新年の辞の録画実況は、２０回以上も途切れた上、映像の編集もお粗末だと評価されている。映像が途切れる度、労働党庁舎の様子と共に、効果音と推定される拍手の音が流れた。
統一部の関係者は
「金第１書記はたばこをよく吸うのか、息切れしているように見えた。前を見ずにうつむいたまま演説する習慣もこれまでと同じ」
と語った。
※「親北勢力は胸に手を当てて考えて欲しい。もし、あなたの子供たちが食べ物に飢えて栄養失調になり、骨だけの痩せ細った体で勉強を諦め、市場のゴミ捨て場を漁っていたら、どんな気持ちになるだろうか。そうせざるを得ない社会に憧れを持つことなど出来るだろうか」
（脱北者Ａさん。脱北者手記集より）※「親北勢力は胸に手を当てて考えて欲しい。もし、あなたの子供たちが食べ物に飢えて栄養失調になり、骨だけの痩せ細った体で勉強を諦め、市場のゴミ捨て場を漁っていたら、どんな気持ちになるだろうか。そうせざるを得ない社会に憧れを持つことなど出来るだろうか」
（脱北者Ａさん。脱北者手記集より）
北朝鮮の金正恩（キム・ジョンウン）朝鮮労働党第１書記は１月１日午前、肉声で新年の辞を発表した。北朝鮮の最高権力者が肉声で新年の辞を発表するのは、１９９４年１月１日以来１９年ぶりのことだ。
金第１書記は１日、新年の辞で「南側の同胞たちと（中略）外国の友人たちに、新年のあいさつを送る」と語った。
北朝鮮に詳しい専門家たちは、このような挨拶を行なったこと自体「異例の事」と語った。また、金第１書記は「同族対決でもたらされるのは戦争だけ。国の分裂を終息させ、統一を成し遂げる上で重要な問題は、北と南の対決状態を解消すること」と語った。
北朝鮮の新年の辞や新年社説を２０年以上も分析してきた治安政策研究所の柳東烈（ユ・ドンヨル）先任研究官は
「お決まりのように取り上げていた在韓米軍撤収や連邦制統一の主張も入っておらず、意外。北朝鮮歴代の新年の辞の中では最も穏健」
と評価した。
北朝鮮が、韓国の歴代大統領選直後に発表した新年の辞または新年共同社説から対南（韓国）・対米中傷を省くことはほとんどない。
李明博（イ・ミョンバク）政権発足直前の２００８年の新年社説では「同族を『主敵』にする対決観念を変えなければならない」と記した。積極的な南北和解・協力を目指していた金大中（キム・デジュン）政権発足直後の１９９８年１月にも「単に政権が交代し大統領が変わっただけでは、南朝鮮（韓国）で変化するものは何もない」と主張した。
■「１０・４宣言を守れ」
最も穏健と評価されている今回の新年の辞について、統一研究院北韓研究センターは１日
「朴槿恵（パク・クンヘ）政権発足を控え、南北関係改善に対する期待感を表わした」
と評価した。
朴槿恵氏サイドの関係者は
「こちら側の出方を見ようという観点からのものではあるが、とにかく良いシグナル。敢えて消極的に解釈する必要はないとみられる」
と語った。
しかし金第１書記は、何の条件もなしに「和解と話し合い」に言及したわけではない。金第１書記は、南北関係前進のための「根本前提」として「北南共同宣言の尊重と履行」を挙げ「（２度の南北首脳会談の合意事項である）６・１５共同宣言と１０・４宣言を徹底して理解するための闘争を積極的に繰り広げなければならない」と語った。
５年前には李明博政権引継委に１０・４宣言の履行を非公式に打診しており、今回は北の権力者が直接肉声で要求してきたわけだ。それほどまでに、韓国側の大規模な対北朝鮮経済協力を望んでいるという意味でもある。
■「経済建設が最も重要」
金第１書記は１日「経済強国建設は、社会主義強盛国家建設の偉業を遂行する中で前面に出てきた最も重要な課業」と語るなど「経済建設」と「人民の生活向上」をことのほか強調した。
通常、新年の辞は「前年の総和（評価）、導入部、政治、軍事、経済、党・労働団体、対南、国際、結語」の順で展開する。
しかし今回はこの形式を破り、政治よりもまず経済に言及した。また新年の辞で使われた単語を分析すると「人民」と「経済」がそれぞれ５９回と２４回で、最も多かった。「金日成（キム・イルソン）」（１１回）「金正日（キム・ジョンイル）」（１４回）「社会主義」（１８回）「主体（チュチェ）」（１３回）「先軍」（６回）等を圧倒した。
韓国高麗大学の柳浩烈（ユ・ホヨル）教授は
「金正恩第１書記が政権を樹立して最初の年となった昨年、経済問題がうまく解決しなかったという証拠」
と語った。
金第１書記も、新年の辞で「新年２０１３年は、社会主義強盛国家建設の転換的局面を開いていく、壮大な創造と変革の年」と語った。「２０１２年強盛国家建設」という目標の達成に失敗したことを自ら認めたわけだ。
■「先端武装装備はもっと作るべき」
金第１書記は昨年の新年共同社説で１４回も登場した「先軍」という表現を、今回は６回しか使わなかった。
韓国梨花女子大学のチョ・ドンホ教授は
「金正日総書記の時代には、先軍が国政全般を総括する概念として使われていたが、今では国防分野に局限された感じ。先軍が評価を下げてきている」
と語った。
しかし、金第１書記は「われわれ式の先端武装装備をより多く作らなければならない」とも語った。
北朝鮮に詳しい専門家は
「核や長距離ミサイルなどの開発を続けるという意志を表明したもの」
と説明した。
■金日成主席の真似は続く
生前の金日成主席は、新年の辞を毎年自ら朗読していたが、公開演説を忌避していた金正日総書記は『労働新聞』『朝鮮人民軍』『青年前衛』の三紙に「新年共同社説」を掲載するという手法を用いた。
金第１書記が肉声で新年の辞を発表する手法を選んだことに対し、韓国統一部（省に相当）の関係者は
「祖父の故・金日成主席を模倣する意図がある」
と語った。
一方、１日に朝鮮中央テレビが放送した新年の辞の録画実況は、２０回以上も途切れた上、映像の編集もお粗末だと評価されている。映像が途切れる度、労働党庁舎の様子と共に、効果音と推定される拍手の音が流れた。
統一部の関係者は
「金第１書記はたばこをよく吸うのか、息切れしているように見えた。前を見ずにうつむいたまま演説する習慣もこれまでと同じ」
と語った。
※「親北勢力は胸に手を当てて考えて欲しい。もし、あなたの子供たちが食べ物に飢えて栄養失調になり、骨だけの痩せ細った体で勉強を諦め、市場のゴミ捨て場を漁っていたら、どんな気持ちになるだろうか。そうせざるを得ない社会に憧れを持つことなど出来るだろうか」
（脱北者Ａさん。脱北者手記集より）※「親北勢力は胸に手を当てて考えて欲しい。もし、あなたの子供たちが食べ物に飢えて栄養失調になり、骨だけの痩せ細った体で勉強を諦め、市場のゴミ捨て場を漁っていたら、どんな気持ちになるだろうか。そうせざるを得ない社会に憧れを持つことなど出来るだろうか」
（脱北者Ａさん。脱北者手記集より）
