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【みんな生きている】煕川発電所編(3)

《自力解決困難な煕川発電所の手抜き工事》

北朝鮮の熙川発電所の手抜き工事は建設初期から予見されていたものだった。
熙川発電所建設突撃隊に属していた脱北者A氏は12月24日、

「建設機械や資材が不足していたにもかかわらず、金日成(キム・イルソン)主席の生誕100年(今年4月15日)までに完成させろという指示だけが下された」

と証言した。


■「主体鉄」「主体繊維」は全て虚偽

北朝鮮の内部事情に詳しい筋は「金正日キム・ジョンイル)総書記は単に熙川発電所の漏水だけではなく、虚偽報告がはびこっているという事実に極度のストレスを感じたはずだ」

と指摘した。
金総書記は今年の「強盛大国」実現に向け、大々的に宣伝してきた新素材の「主体(チュチェ)鉄」「主体繊維」が実体のない虚偽だったとの報告を受け、激憤していたという。
「主体鉄」とは溶鉱炉にコークスの代わりに無煙炭を使用して生産した鉄であり、「主体繊維」のビナロンは石油ではなく、無煙炭から得られるカーバイド(炭化物)を原料とする合成繊維だ。原料を輸入する必要がないという意味で「主体」という言葉が付いている。
しかし、金策製鉄連合企業所が2011年11月に開発したと報告した主体鉄の溶鉱炉は偽物だった。また、主体繊維を生産する「2・8ビナロン連合企業所」は電力と原料の不足で正常に稼働出来ずにいる。
金策製鉄所で今年初め、リ・ヒホン支配人、リ・チョルフン責任書記たち幹部が相次いで粛清されたのも虚偽報告が原因だった。
消息筋は

「相次ぐ虚偽報告で金総書記は強盛大国がだんだん遠ざかっていると感じていたはずだ。そんな状況で厳寒の熙川発電所建設現場へと急ぎ、健康に無理が生じた」

と証言した。


■手抜き工事の決定版

熙川発電所ではマイナス30度の酷寒でもコンクリートの打設作業を強行し、砂が不足して土を混ぜることもしばしばだったという。
建設関係者は

「コンクリートを寒さの中で養生(打ち込んだコンクリートが十分に硬化するように保護する作業)したり、土等の不純物が混ざったりすれば、強度が低下し、崩れたりひびが入ったりする」

と指摘した。
ダムに水を貯める作業も通常はダムの完成後に行われるべきだ。しかし、北朝鮮発電所を早期に稼働させるため、ダムが3分の2程度完成した段階で貯水を開始しているという。手抜き工事に拙速な貯水も重なり、漏水が悪化した。
北朝鮮がこれまで朝鮮中央通信等を通じて公開した熙川発電所の写真でもダムのあちこちに漏水による染みが確認出来た。
熙川発電所は現在、稼働は開始したが、漏水が深刻で正常な稼働に支障を来しているという。出力は当初目標(15万kw)に満たない状況だとされる。
消息筋は

「中国から導入した特殊接着剤とセメントで何度か補修工事を行なったが、漏水問題はまだ解決出来ていない」

と語った。
また、建設専門家は

「コンクリートダムは漏水があっても崩壊するケースはまれだが、補修せずに長期間放置すれば亀裂がひどくなり、安全事故につながる可能性がある」

と診断した。
北朝鮮当局は自力での解決が不可能だと判断。在外公館と外貨稼ぎの担当者に「海外の先進技術を秘密裏に収集せよ」との指示が下されたという。
これを受け、北朝鮮の外交官は中国の三峡ダムの建設業者や欧州の有名な水力発電企業と接触を試みているという。


■慢性的な電力難

北朝鮮が熙川発電所に大きく期待したのは慢性的な電力難が理由だった。
韓国銀行によると、2010年末現在で北朝鮮の発電容量は697万kw、発電量は230万kw/時で、韓国のそれぞれ9%、5%にすぎない。それも特権階級が暮らす平壌と電力を大量消費する軍需工場に優先供給すれば余裕がない。
2000年代に入り、北朝鮮は豊富な水資源を利用して電力難を克服するという目標を立て、中・小規模の水力発電所の建設に力を入れた。そのうち、平壌の電力難解消を目指した熙川発電所は「2012年の強盛大国建設」という政権レベルの課題に直結するプロジェクトだった。
金正日総書記が死去直前に熙川発電所を頻繁に訪れたのもそのためだ。
韓国統一部関係者は

「動くのも不自由な金総書記が余裕さえあれば山中にある熙川発電所を訪れ、今年4月の完成を促した。それだけ北朝鮮の慢性的な電力難克服が差し迫った問題だということだ」

と指摘した。



※「親北勢力は胸に手を当てて考えて欲しい。もし、あなたの子供たちが食べ物に飢えて栄養失調になり、骨だけの痩せ細った体で勉強を諦め、市場のゴミ捨て場を漁っていたら、どんな気持ちになるだろうか。そうせざるを得ない社会に憧れを持つことなど出来るだろうか」
脱北者Aさん。脱北者手記集より)