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【みんな生きている】松本京子さん

35年前に北朝鮮に拉致された鳥取県米子市出身の松本京子さんの母親・三江さんが、老衰のため亡くなりました。
89歳でした。
松本三江さんは、昭和52年に鳥取県米子市で「近所の編みもの教室に行く」と言って自宅を出たあと北朝鮮に拉致された松本京子さんの母親です。
成人式で京子さんが着た水色に赤やピンクの花柄があしらわれた着物を定期的に陰干しするなど、30年以上にわたって娘の帰りを待ち続けてきましたが、ここ数年は高齢に加え認知症の症状も出始めていました。
長男の孟さんによりますと、三江さんは11月5日に体調を崩し、米子市内の病院に入院していましたが、27日午後4時過ぎに老衰のため亡くなりました。
孟さんはNHKの取材に対し、
「母が生きているうちに京子に会わせてやりたかったが、願いがかなわず非常に残念です。母には天国でゆっくり休んでもらい、京子が無事帰って来ることを祈っていてほしい」
と話しました。


■横田 滋さん“本当に心残りだっただろう”

松本京子さんの母親の三江さんが亡くなったことについて、拉致被害者横田めぐみさんの父親の滋さんは
「本当に心残りだっただろうと思います。京子さんは、お母さんが作った漬け物が大好きで、『いつ帰ってきても、おいしい漬け物を食べさせてあげたい』と、塩加減を調整して何種類も作っておられたのを思い出します。家族が亡くなったあとに被害者が帰ってきても解決にはなりません。1日も早い解決を望んでいます」
と話しました。
また、めぐみさんの母親の早紀江さんは
「温かくて素朴な方で、一緒に手を握り合って『頑張りましょう』『きっと何とかなりますよ』と励ましあったことを覚えています。問題が長期化し、被害者の親たちが次々に亡くなっていくのに、一向に解決の糸口が見えてこないことに強い危機感を持っています。私たちも明日どうなるか分からず、政府は、この現実を真剣に受け止めてほしい」
と話しました。


■高齢化進む被害者家族

拉致から30年以上が経ち、被害者の帰国を待ち続ける家族の多くは、高齢になっています。
政府が認定している、北朝鮮による拉致被害者のうち、安否が分かっていない12人の親の平均年齢は今年85歳を超えました。
最も高齢の市川修一さんの父親の平さんが97歳、病床にある松木 薫さんの母親のスナヨさんも今年91歳になりました。
親の世代では最も若い横田めぐみさんの母親の早紀江さんも76歳になり、父親の滋さんは今月80歳の誕生日を迎えました。
増元るみ子さんの父親や市川修一さんの母親のように、拉致された肉親との再会を果たせぬまま、すでに他界した人もいます。
高齢化が進む被害者家族にとって「生きているうちに解決してほしい」という思いは年々強くなっており、問題の解決は時間との闘いになっています。

◆昭和52(1977)年10月21日
女性拉致容疑事案
被害者:松本京子さん(拉致被害時29歳)
自宅近くの編み物教室に向かったまま失踪。
平成14年10月にクアラルンプールで行われた日朝国交正常化交渉第12回本会談及び平成16年に計3回行われた日朝実務者協議において、我が方から北朝鮮側に情報提供を求めたが、第3回協議において、北朝鮮側より、北朝鮮に入境したことは確認できなかった旨回答があった。
平成18年11月に松本京子さんが拉致認定されて以降政府は北朝鮮側に対し即時帰国及び事案に関する真相究明を求めてきているが、これまでに回答はない。



拉致事件、捜査の現状】
北朝鮮による拉致事件を巡り、日本の警察はこれまで実行犯や指示役として北朝鮮の元工作員たち合わせて11人を国際手配しています。
拉致には金正日キム・ジョンイル)総書記が掌握していた対外情報調査部と呼ばれる工作機関が組織的に関わっていた疑いが強いと見て捜査を続けています。
このうち、福井県の地村保志さん・富貴恵さん夫妻を拉致した実行犯として元工作員辛光洙シン・グァンス)容疑者が手配されています。
また、大阪府の原 敕晁さんが拉致された事件では、辛容疑者とともに金吉旭(キム・キルウク)容疑者も共犯者として手配されています。
この他、東京都の久米 裕さん拉致事件では金世鎬(キム・セホ)容疑者が、新潟県曽我ひとみさん拉致事件にはキム・ミョンスク容疑者がそれぞれ関わったとして手配されています。
北海道出身の渡辺秀子さんの子供2人の拉致事件では、工作員グループのリーダー格で北朝鮮にいると見られる洪寿恵(ホン・スヘ)こと木下陽子容疑者が手配されています。
新潟県の蓮池 薫さん・祐木子さん夫妻の拉致事件ではチェ・スンチョル容疑者が実行犯として手配されている他、金総書記が掌握していた対外報調査部と呼ばれる北朝鮮の工作機関の幹部であるハン・クムニョン容疑者とキム・ナンジン容疑者が拉致の実行を指示したとして手配されています。
ハン容疑者たちは工作機関で「指導員」と呼ばれる立場で、辛光洙容疑者たちもこの組織の一員だったことがわかっており、警察は北朝鮮が組織的に拉致を実行した疑いが強いと見て捜査を続けています。
よど号ハイジャック事件のメンバーたちも1980年代にヨーロッパで相次いだ3人の日本人拉致に関わった疑いで国際手配されています。
このうち、有本恵子さん拉致事件では魚本公博(安部公博)容疑者が、石岡 亨さんと松木 薫さん拉致事件ではよど号メンバーの妻の森 順子・若林佐喜子両容疑者がそれぞれ手配されています。