【みんな生きている】脱南者編/産経新聞
《韓国政府が頭を抱える「脱南者問題」》
韓国に定住していた脱北者が再び第三国や北朝鮮に向かう“脱南者”が多発している。最近では、北に逆戻りした住民が韓国での生活を「生き地獄」だったと非難。以前ならば、こうした言動は「北朝鮮体制の政治宣伝」と切り捨てられてきた。だが一方で、韓国社会の差別や就職・生活難に苦しむ脱北者が増加し社会問題化しているのも事実。「同胞」であるはずの脱北者すら逃げ出していく現状に、韓国政府は頭を抱えている。
10月15日付の『東亜日報』社説はこの問題に言及。これまで韓国に亡命し定住を決めた累計2万5560人の脱北者のうち、「689人は第三国に滞在している」と把握されていると指摘した。
経済的困難や韓国生活への不適応で自殺した脱北者も26人に上るという。
さらに、過去5年間に韓国籍者の難民申請を受け付けた国から韓国政府への指紋照会155件のうち、81.3%の126件は韓国に定住していた脱北者だったとも指摘している。
韓国政府は現在、定着準備金や住宅支援金、職業訓練費用といった社会福祉から教育支援まで、脱北者に対し1人当たり2,000万ウォン(約185万円)~4,800万ウォン(約443万円)を支給している。
同じ言語圏で言葉の問題は基本的になく、手厚い支援制度も用意している韓国から、こんなにも多くの人々が逃げ出している事実に、韓国政府や脱北者の支援活動に当たる関係者たちはショックを受けている。
■「悪夢の日々」
韓国政府にとって、さらに頭の痛い問題が北朝鮮へ帰還する脱北者の続出だ。北朝鮮は金正恩(キム・ジョンウン)体制以降、12人が戻ったと宣伝している。
北朝鮮の官製メディア・朝鮮中央通信によると、9月30日には平壌で韓国から北朝鮮に戻った元脱北者たちの「座談会」が開かれたという。
参加したチャン・グァンチョルという男性(33歳)は
「韓国では仕事探しが大変だ。就職できたとしても給料は韓国人の半分以下で、悪夢の日々だった」
と話した-と朝鮮中央通信は伝えた。
韓国政府関係者は
「金正恩体制を称賛させて、南(韓国)へ逃れようとする北朝鮮住民の夢を壊すことを狙った宣伝工作だ」
と指摘する。
韓国情報筋は
「韓国に定住した脱北者に北朝鮮側が接近し、北朝鮮に残した親類や家族の安否、さらに資産の保全等にも触れながら、言葉巧みに北朝鮮への帰還を誘導するケースも把握している」
と明らかにする。
だが、約12年前から韓国に住む50代の男性脱北者は
「韓国で生活して初めて、韓国人にとっても暮らしにくい社会なのだと分かった。就職、進学や結婚など人生すべてがカネとコネで決まる。当の韓国人が常に不満を抱えながら暮らしているというのに、我々のような完全なよそ者の脱北者が生きていく余地はない」
と打ち明けた。
この男性によると、韓国での厳しい生活実態は北朝鮮住民の間にも広まっていて、
「韓国で支援を受けてカネをためたら、第三国に再脱出しようと最初から計画する人もいる」
という。
■支援策拡充も
韓国政府は、脱北者の受け入れを「(朝鮮半島の)小さな統一」と位置づけ、定住と社会的な融和を目指してさまざまな施策を打ち出してきた。
累積脱北者数が2万人目前となった2010年9月には、脱北者を「親しい隣人として社会全体で受け入れるときがきた」(韓国政府関係者)とし、「北朝鮮離脱住民の保護並びに定着の支援に関する法律」を改定。就業支援の強化や、韓国社会への適応を容易にするための教育機関の設立等現在の支援制度の原型が完成した。
また最近の“脱南”現象を前に、ソウル市はさらに「北朝鮮離脱住民定着支援総合対策」を発表した。
脱北者向け総合支援施設を新設し心のケアや就職を斡旋する他、市役所と公的企業での脱北者採用枠を現状の4~5倍に拡充。街頭キオスクなどの営業許可の優先割り当てや、地域住民が脱北者への理解を深める事業も含まれるという。
ソウル市は
「これまできめ細かく対応できなかった点を補うため、脱北者本人や支援活動関係者へのヒアリングを24回実施した。自治体では初の総合的な支援制度だ」
と胸を張る。
だが、脱北者の一人は
「何かをしなければならないという思いは伝わるが、実効性という意味においては期待できるものではない」
と指摘している。
※「親北勢力は胸に手を当てて考えて欲しい。もし、あなたの子供たちが食べ物に飢えて栄養失調になり、骨だけの痩せ細った体で勉強を諦め、市場のゴミ捨て場を漁っていたら、どんな気持ちになるだろうか。そうせざるを得ない社会に憧れを持つことなど出来るだろうか」
(脱北者Aさん。脱北者手記集より)
韓国に定住していた脱北者が再び第三国や北朝鮮に向かう“脱南者”が多発している。最近では、北に逆戻りした住民が韓国での生活を「生き地獄」だったと非難。以前ならば、こうした言動は「北朝鮮体制の政治宣伝」と切り捨てられてきた。だが一方で、韓国社会の差別や就職・生活難に苦しむ脱北者が増加し社会問題化しているのも事実。「同胞」であるはずの脱北者すら逃げ出していく現状に、韓国政府は頭を抱えている。
10月15日付の『東亜日報』社説はこの問題に言及。これまで韓国に亡命し定住を決めた累計2万5560人の脱北者のうち、「689人は第三国に滞在している」と把握されていると指摘した。
経済的困難や韓国生活への不適応で自殺した脱北者も26人に上るという。
さらに、過去5年間に韓国籍者の難民申請を受け付けた国から韓国政府への指紋照会155件のうち、81.3%の126件は韓国に定住していた脱北者だったとも指摘している。
韓国政府は現在、定着準備金や住宅支援金、職業訓練費用といった社会福祉から教育支援まで、脱北者に対し1人当たり2,000万ウォン(約185万円)~4,800万ウォン(約443万円)を支給している。
同じ言語圏で言葉の問題は基本的になく、手厚い支援制度も用意している韓国から、こんなにも多くの人々が逃げ出している事実に、韓国政府や脱北者の支援活動に当たる関係者たちはショックを受けている。
■「悪夢の日々」
韓国政府にとって、さらに頭の痛い問題が北朝鮮へ帰還する脱北者の続出だ。北朝鮮は金正恩(キム・ジョンウン)体制以降、12人が戻ったと宣伝している。
北朝鮮の官製メディア・朝鮮中央通信によると、9月30日には平壌で韓国から北朝鮮に戻った元脱北者たちの「座談会」が開かれたという。
参加したチャン・グァンチョルという男性(33歳)は
「韓国では仕事探しが大変だ。就職できたとしても給料は韓国人の半分以下で、悪夢の日々だった」
と話した-と朝鮮中央通信は伝えた。
韓国政府関係者は
「金正恩体制を称賛させて、南(韓国)へ逃れようとする北朝鮮住民の夢を壊すことを狙った宣伝工作だ」
と指摘する。
韓国情報筋は
「韓国に定住した脱北者に北朝鮮側が接近し、北朝鮮に残した親類や家族の安否、さらに資産の保全等にも触れながら、言葉巧みに北朝鮮への帰還を誘導するケースも把握している」
と明らかにする。
だが、約12年前から韓国に住む50代の男性脱北者は
「韓国で生活して初めて、韓国人にとっても暮らしにくい社会なのだと分かった。就職、進学や結婚など人生すべてがカネとコネで決まる。当の韓国人が常に不満を抱えながら暮らしているというのに、我々のような完全なよそ者の脱北者が生きていく余地はない」
と打ち明けた。
この男性によると、韓国での厳しい生活実態は北朝鮮住民の間にも広まっていて、
「韓国で支援を受けてカネをためたら、第三国に再脱出しようと最初から計画する人もいる」
という。
■支援策拡充も
韓国政府は、脱北者の受け入れを「(朝鮮半島の)小さな統一」と位置づけ、定住と社会的な融和を目指してさまざまな施策を打ち出してきた。
累積脱北者数が2万人目前となった2010年9月には、脱北者を「親しい隣人として社会全体で受け入れるときがきた」(韓国政府関係者)とし、「北朝鮮離脱住民の保護並びに定着の支援に関する法律」を改定。就業支援の強化や、韓国社会への適応を容易にするための教育機関の設立等現在の支援制度の原型が完成した。
また最近の“脱南”現象を前に、ソウル市はさらに「北朝鮮離脱住民定着支援総合対策」を発表した。
脱北者向け総合支援施設を新設し心のケアや就職を斡旋する他、市役所と公的企業での脱北者採用枠を現状の4~5倍に拡充。街頭キオスクなどの営業許可の優先割り当てや、地域住民が脱北者への理解を深める事業も含まれるという。
ソウル市は
「これまできめ細かく対応できなかった点を補うため、脱北者本人や支援活動関係者へのヒアリングを24回実施した。自治体では初の総合的な支援制度だ」
と胸を張る。
だが、脱北者の一人は
「何かをしなければならないという思いは伝わるが、実効性という意味においては期待できるものではない」
と指摘している。
※「親北勢力は胸に手を当てて考えて欲しい。もし、あなたの子供たちが食べ物に飢えて栄養失調になり、骨だけの痩せ細った体で勉強を諦め、市場のゴミ捨て場を漁っていたら、どんな気持ちになるだろうか。そうせざるを得ない社会に憧れを持つことなど出来るだろうか」
(脱北者Aさん。脱北者手記集より)