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【みんな生きている】柳京ホテル編

《『産経新聞』が伝える、柳京ホテルのちょっとアレな現状》

建設開始から四半世紀を経てもなお建設途上のまま“放置”されている「人類史上最悪の建物」は、やはり完成もしなければ開業もしなかった。北朝鮮平壌の柳京ホテルのことだ。
欧州のホテルグループが今年中の一部開業を明らかにしていたが、中国メディア等が4月上旬、グループ側が運営計画から撤退したと報じた。国際社会に挑発行為を続け、朝鮮半島の緊張が高まっていることが理由とみられ、「外資獲得で経済危機脱出」という北側のシナリオはフイに。自らの首を絞めた格好の金正恩第1書記。崩壊の恐れさえ指摘されるホテル同様、危機に立たされた?


■いまの北朝鮮ではムリ…

アメリカの北朝鮮専門サイト『NKニュース』は3月末、欧州のホテルチェーン・ケンピンスキーホテルグループが柳京ホテルの今年中の開業を保留したと報じた。『NKニュース』によると、同ホテル側が現在の北朝鮮の市場に参入するのは不可能だと判断したとしている。
香港紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』は4月上旬、同グループは柳京ホテルを完成させたうえで運営する予定だったが、運営計画そのものを「撤回」することを決めたと伝えた。
柳京ホテルはピラミッド型の105階建てで、高さは約330m。客室3,700室を備える予定だった。
一昨年に死去した金正日キム・ジョンイル)総書記の肝いりで、1989年に建設がスタート。だが、資金不足や地盤の悪さ等から約四半世紀経っても完成せず、欧米メディアに「人類史上最悪の建物」等と酷評されていた。
金正恩体制にとって、同グループの参画は、その窮状を救ってくれるものだった。しかも、ケンピンスキーホテルグループのレトー・ヴィットヴァー会長は昨年、韓国メディアに対し「最上部に最大150客室規模をオープンする」と宣言。ソウルで行われた北朝鮮の観光・レジャー投資に関する講演では「現金投資ではなく経営面で参加する」とも説明しており、北朝鮮にとっては夢のような話だったに違いない。
だが、結局、ダメだった。AFP通信の取材に対し、ホテル側の広報担当者は「(北朝鮮への)市場参入は不可能」と説明。ロイター通信も広報担当者の話として「運営契約は締結されなかった」と伝えた。


■瀕死の経済救う切り札のはずが…

金正恩体制後、(北朝鮮の)開放にかかる時間は速まったようだ」
ヴィットヴァー会長はそう期待を寄せていたという。実際、開放につながる動きは相次いでいた。
昨年秋には「世界最低の航空会社」と称される北朝鮮の国営航空会社「高麗航空」が英文ホームページを開設。昨夏には新たなテーマパークもでき、金第1書記が妻の李雪主(リ・ソルジュ)氏とはしゃいでいる姿が報道された。
さらには今年1月、アメリカ・グーグルのエリック・シュミット会長が北朝鮮を訪問し、経済成長を望むのであればインターネットのアクセスを開放する必要があると伝えたという。こうした背景から北朝鮮は新たに外国資本を受け入れ、観光産業等に参入することで、海外資金を集め、瀕死の経済を回復させようとしているとみられていた。
アメリカの国際ビジネス紙『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』によると、ケンピンスキーの中国支部長、ミヒャエル・ヘンスラー氏は柳京ホテルは国際基準を満たし、5つの回転式レストランやスパ、宴会場、商業施設、地下には劇場や映画館を備える計画だと述べていた。
ヘンスラー氏はさらにこう話したという。
「わが社が最初に北朝鮮に参入し、その市場を率いる。わが社が市場の基準を造りあげる存在になるだろう」
だが、企業は正直だ。危ないと思えば、すぐに手を引く。利益が出ないと分かれば、撤退するのも早い。
要するに、ケンピンスキーもいまの北朝鮮では儲からないと判断しただけだ。そう、逃げ出したのだ。


■変わらぬ「張りぼて」と他人任せの「依存国家」

柳京ホテルは今、どうなっているのだろうか。
ヴィットヴァー会長の話では、ホテルの外装工事と、ロビーや宴会場等の内部工事は終わっている。今年の半ば頃から、客室のある最上層部から先に開業する予定だとしていた。また、ホテルの中間までのエレベーターはやや曲がっており、現在は使用できない。施工したスイスのエレベーター会社シンドラーの施行ミスだという。
地盤の悪い場所に建設されたことと設計ミスが加わり、建物は傾いている。資金不足からコンクリートの外枠ができただけで建設工事は中断された。いまは外枠に窓ガラスが取り付けられただけ。まさに「張りぼて」だ。
そのうえ、コンクリートの劣化や地盤の不安定さ等から耐久性に問題があり、完成したところで崩壊の恐れが指摘されている。いずれにしろ、国際社会を挑発し、孤立する北朝鮮だが、外国資本なしに柳京ホテルを完成させ、開業することは極めて困難な状況になった。
18年前に訪朝した際、新潟空港で飛行機に乗り込むとき、日本製の大型テレビが何台か積み込まれるのを見た記憶がある。北朝鮮は、海外の手を借りなければ単独では何も作り出せない国だ。ホテルだけでなく、国家そのものも誰かの手を借りなければ存続は難しいのではないのだろうか。



※「親北勢力は胸に手を当てて考えて欲しい。もし、あなたの子供たちが食べ物に飢えて栄養失調になり、骨だけの痩せ細った体で勉強を諦め、市場のゴミ捨て場を漁っていたら、どんな気持ちになるだろうか。そうせざるを得ない社会に憧れを持つことなど出来るだろうか」
脱北者Aさん。脱北者手記集より)