もずの独り言・はてなスポーツ+物置

半蔵ともず、はてなでも独り言です。

奈穂子様/宇都宮釣り天井事件

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桃栗三年、柿八年、梨の馬鹿めは十二年。

オレたち江戸っ子は口が悪りいからな。

弥七はさっきっから「うめえ、うめえ」って栗食ってやがるけどな、オレァつまみにならねえモンはああやってバクバク食ったりはしねえんだ。

栗は栗おこわにしめじの吸い物。秋だなあ、オイ。

その栗は宇都宮の栗ですかい、奈穂子サン?

そういやあ水戸のジイサンが助の字格の字連れて宇都宮に出掛けたな。

水戸のジイサン、例のあの「釣り天井事件」を調べ直すんだって、な。弥七は一足先に資料をジイサンに渡して今日はオレんちで栗バクバク食ってるってワケよ。

本多上野介正純様。

敵の多いお方でな。

本多様は大久保忠隣様と長年権力争いしててな。大坂の陣の少し前に大久保様を失脚させてケリをつけた。

そのあと、本多様は下野小山5万石から同じく下野の宇都宮に15万石で転封になった。御譜代が10万石も加増されるなんざ、まず無えこった。

いいかい奈穂子サン、徳川幕府のやり方ってえのはな、「権力者は安月給、窓際は高給取り」ってやり方だった。

だから加賀様(前田家)は100万石でも幕政(国政)に口を挟めねえし、3千石の旗本でも奉行職に就きゃあ幕政に口を挟めた。それで「百万石の外様より、三千石の直参」って言うんだぜ。

何でそんなやり方かって?

僻み、やっかみ。

人間ってヤツはどうしても僻んだりやっかんだりするモンなんだ。僻みやっかみから団結が損なわれる。権現様はそう見たんだろうなあ。苦労されたからな、権現様は。それで御譜代の方々は給料安~く抑えて、外様にゃ気前良くしたのよ。

この10万石加増の話が決まったときにな、それを聞いた柳生但馬守様(宗矩)が本多様に「今からでも遅くねえから御辞退しろ」って忠告したんだがな、でも本多様は下野宇都宮15万石を受けちまった。

本多様の親父の佐渡守正信様はな、死ぬ間際に「身代を大きくしようとするな。小身でいることこそが末永いしあわせぞ」って言い残してるんだ、奈穂子サン。これはな、遠回しに「アレもコレもと欲張るヤツァろくな死に方しねえぞ」って言ってるんだ。佐渡守様も権現様に負けねえくらい苦労したお人だ。だからこそ、徳川幕府最大権力者だったにも関わらず石高は相模玉縄1万石。奈穂子サンには信じられねえかも知んねえが、たったの1万石だった。

本多様は親父と違って苦労を知らねえ「えりーと」だったからな。だから周りの僻みやっかみに気付けねえまんま下野宇都宮15万石を受けちまったんだろうぜ。「もらって当たり前」ってな。

僻みやっかみが生み出した嘘八百の釣り天井。水戸のジイサン、どんな気持ちで宇都宮の栗かじってるんだろうな。

「もんぶらん」もいいんだけどな、オレァやっぱりどら焼きだ。

奈穂子サン、また。