もずの独り言・はてなスポーツ+物置

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奈穂子様/替え玉お見合い事件

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弥七が正月早々おいなりさんなんて持って来やがるから一口食ったら中身がおからだった。

水戸のジイサン、いたずらっ子だからな。

佐竹右京大夫義堯様。

出羽久保田(秋田)20万5800石の国持お大名だ。

奈穂子サンの時代は離縁したヤツのことを「バツイチ」だとかって言うみてえだが、義堯様は二度離縁しなすってるから「バツ2」だ。

何で「バツ2」なのかはよくわからねえんだがな。ただ、義堯様御自身は「やっぱりカミサンが欲しいなァ…」って思ってたんだ。

そこへ、三度目の縁談が舞い込んで来た。お相手は丹波篠山藩主・青山忠良様の娘でな。篠山藩は6万石だが御譜代の中では名家だ。いくら20万石の国持って言ったって、外様は外様だ。義堯様はこの縁談に大喜びよ。

篠山藩は義堯様に「ぜひ我が姫を見て欲しい。そのうえで、縁談を決めて欲しい」って言って来た。こいつは奈穂子サンの時代でいうところの「お見合い」ってえヤツなんだがな。

ただ、お大名で「お見合い」をして縁組みするヤツァまずいねえ。だから江戸っ子の間ではちょっとした騒ぎになった。

で、「お見合い」の当日だ。篠山藩邸には野次馬がいっぱいいてな。中なんか覗けっこねえのにな。そんなところに義堯様はやって来た。

義堯様の目の前に現れたのは、そりゃあもう世にも艶やかな女神様かと思うくらいの美女だった。義堯様はもうずうっとデレーッとしっぱなしでな。

義堯様は「決めた!この縁組み、お受けいたす」って声弾ませて青山様に返答した。

バツ2」のお大名の三度目のお相手だ。多少ブサイクでも文句は言えねえ。そんなところに降って涌いた美女との縁談よ。義堯様はすっかり浮かれちまった。

そしてお姫様の輿入れの日がやって来た。

心ウキウキの義堯様はお姫様の輿の戸をてめえで開けた。で、開けた瞬間、目の前が白黒になった。「このブスは、なんだ?」って小せえ声で言ったまま、しばらく立ち尽くしちまった。

無理もねえ話だ。「お見合い」で義堯様が会ったのは替え玉の女中、本物の姫はこのブスだったんだから。

あとで青山様が直接義堯様に詫びたんだがな、そん中で青山様は「娘はあの通りのブスだから、せめて人並みに縁組みさせてやりたかった」って話してる。ま、度を越した親バカってヤツだな。しょうがねえなあ、ったく。

義堯様はこのブスのお姫様を9日目に離縁した。「オレはこのブスに耐えられねえ」って手紙添えてお姫様を青山家に送り返した。

「心美人」って言葉もあるんだがな。お大名はオレたち庶民とは違うからよ。ま、お姫様には気の毒な話だったな。

おいなりさんの中身がメシだと思ったらおから。

そんなこともある世の中だ。

奈穂子サン、また。