もずの独り言・はてなスポーツ+物置

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奈穂子様番外編/家宣将軍と近衛煕子

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今日はな、湯豆腐だ。

水戸のジイサンが阿波の蜂須賀んトコの稲田様(筆頭家老)と付き合いがあってな。そンで今日はすだちしょうゆで湯豆腐ってえワケだ。

こいつがまた辛口の酒に合うのよ。

何?恋だ!?

麻由坊、おめえ、マセてやがるなァ。

で、アレか?

麻由坊の時代のおねえちゃんたちは恋をするとみんなして「ちよこれいとぱふぇ」を食うのか?

面白れえモンだな。

恋心ってえのは、本人も思わねえとこから始まることもあるからな。

近衛熙子様。

家宣公の御台所様よ。

熙子様は近衛家の姫君でな。綱吉公の御台所様(鷹司信子)の鷹司家とはおんなじ五摂家よ。

熙子様は家宣公との御婚儀をえれえ嫌がってな。「甲府に嫁ぐくらいなら毒を煽って死にます」って言ったくらいだ。

初めはな、水戸の綱條公の嫁にってえ話だったんだがな、熙子様は嫌がって話がまとまらなかった。

しかし幕府が引き下がらねえ。そンで今度ァ甲府の綱豊様(のちの家宣将軍)に嫁いでくれって話になった。

あんまりに幕府がしつけえモンだから、とうとう近衛家も嫌々ながらこの縁組みに承知したのよ。

熙子様は京を出発してから甲府に着くまでシクシク泣き続けてな。こいつァあんまりに気の毒じゃねえかって思う連中もいたのよ。

ところがだ、麻由坊。甲府に着いて綱豊様と御対面して熙子様の様子がガラッと変わったんだ。あんなにシクシクしてたのがしあわせそうな顔になってな。

綱豊様は物静かな学問好きのお方でな。そんなトコが熙子様にはキュンと来たんだろうぜ。

相性はバツグンだったさ。二人とも性格が似た者同士だからすぐにおしどりになった。恋心なんてえのはちょっとしたことで芽生えるのよ。

この二人はな麻由坊、夫婦ってえより恋人同士ってな感じのまんま続いたのよ。それは綱豊様が家宣公になったあともそうだった。

家宣公は将軍になって3年ちょっとで死んじまったんだがな、跡を継いだ家継公も3年ちょっとで風邪をこじらせてそのまま死の床になっちまった。

熙子様はこのとき、八代将軍に右近将監様(松平清武)を推したんだ。麻由坊には馴染みの無え名前かも知んねえがな、右近将監様は家宣公の血のつながった御実弟よ。

熙子様と家宣公の間にゃ男の子ができなかったからな。そンで八代将軍にはせめて「だいじな恋人」と血のつながったお方をって思ったんだろうぜ。ま、結局、そいつは叶わねえで紀州から吉宗公が八代将軍に就任したんだがな。

吉宗公は熙子様に気遣って右近将監様の身分を保証した。だから熙子様も大奥の筆頭として吉宗公を支えた。

ただまあ、残念なことに右近将監様は嫡男の清方様に先立たれてな。後を追うように右近将監様も死んじまったんで家宣公の血筋は熙子様の生前に全部途切れちまった。

甲府で芽生えた恋心が江戸で大きな花ァ咲かせたんだがな、たった3年ぽっちで散っちまった。

ま、アレだ麻由坊。

熙子様も家宣公も、きっと今頃あの世で仲良く「ちよこれいとぱふぇ」を食ってるだろうぜ。

熙子様は相場と違って初恋を実らせたのよ。しかもその初恋の相手が征夷大将軍になるなんて、大した初恋じゃねえか。

おい麻由坊、おめえ、ちよこれいとばっかし食ってると、顔にボツボツが出来ちまうぞ。

麻由坊、またな。