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いずみ江戸日記/最上騒動・義康殺害

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ん?

いずみサン、そいつァ桜鱒ですかい?

桜鱒は塩たっぷり降って焼くとうめえんだ。

その桜鱒は最上(山形)で獲れた桜鱒でごぜえやしょう、いずみサン。

最上騒動の話をすりゃあいいんで?

わかりやした。

こいつァ長げえ話になるから二回に分けやすぜ。

じゃ、ちょいとお耳を拝借しやすぜいずみサン。

左少将(最上義光)様にゃあ息子が6人いた。

長男が義康様、次男が家親様、三男が清水義親様、四男が山野辺義忠様、五男が上山義直様、六男が大山光隆様で、みんな無事成長した。

左少将様は長男の義康様に最上家を継がせようと思ってた。が、関ヶ原で事情が変わっちまった。

左少将様は太閤が薨去なさったあと、権現様に家親様を、秀頼公には清水義親様を証人(人質)に差し出した。徳川にも豊臣にも証人出したのは、あとでどっちに転んでも最上家は残せるって腹だってこった。

いずみサンも知っての通り、関ヶ原で勝った権現様が天下を取った。権現様に証人として差し出された家親は権現様からも秀忠公からもえれえ気に入られててな。権現様も秀忠公も「家親が最上を継いでくれたほうが都合がいいや」って思った。

そこでだいずみサン、例のあのお方の出番よ。あのお方ってえのは佐渡守様(本多正信)だ。佐渡守様は左少将様の家臣の里見民部ってえのを調略して左少将様と義康様が不仲になるように仕向けた。そこに、義康様の家臣の原 八右衛門ってえのがいて、こいつがまた豊臣贔負の野郎でな。この原の野郎が徳川寄りの左少将様と義康様が不仲になるように仕向けた。左少将様の側にも義康様の側にも親子が不仲になるように企むヤツがいたってこった。

里見の野郎が毎日毎日あること無えこと左少将様に義康様の悪口吹き込み続けたモンだから、とうとう左少将様と義康様の不仲は決定的になっちまった。そこへ、原の野郎が義康様に「あんな父親は父親じゃありません。義光公を倒して豊臣に付きましょう」って吹き込んだ。

その原の野郎の悪だくみを里見の野郎が左少将様に告げ口した。告げ口するときにゃあ原の悪だくみが義康様の悪だくみに変わってた。左少将様はここで決断した。あれァ確か慶長8年の8月16日だったな。左少将様は義康様を寒河江から山形に呼びつけてな、「おまえには最上は継がせない。高野山に入って出家しろ」って申し付けた。義康様も親子仲のこたァ諦めてたからな、「父上のお申し付け通りにします」って返事して山形城を出た。

城を出て、寒河江へ帰るその道中で事は起きた。里見の野郎が火縄持った刺客を待ち伏せさせててな、義康様や原 八右衛門一行を火縄でみんな撃ち殺した。で、もいだ義康様の首を左少将様に差し出した。

左少将様は泣きじゃくった。いずみサン、左少将様と義康様はもともとは仲良し親子だったんだ。それが、こんなかたちで我が子を始末しなきゃなんねえなんて、左少将様は昔の事をあれこれ思い出して泣き続けた。

そこに、左少将様にとって聞き捨てならねえことを訴え出るヤツが現れた。そいつは寒河江からボロボロの服着て山形まで必死の思いで出て来てな。で、いずみサン、左少将様に「これまで里見民部が殿に話したことは全て嘘。せめてこれだけは殿のお耳に入れておかねば義康様が成仏出来ませぬ」って涙ながらに訴えた。

左少将様は家臣の斉藤光則様に今回の一件を調べ直すようにお命じになった。そしたらいずみサン、里見の野郎のこれまでの告げ口は全部嘘っぱちだってことがはっきりした。左少将様は斉藤様に里見民部一族の皆殺しをお命じになった。斉藤様は義康様を始末したのと同じように里見一族を火縄で片っ端から撃ち殺した。

いずみサン、義康様は人望あって誰からも好かれてた。それは左少将様も同じだ。左少将様は義康様に最上を継がせたかった。里見の野郎とその一族を皆殺しにしたところで、義康様は生き返らねえ。それからだ、いずみサン。左少将様は何をやるにも無気力になっちまってな。脱け殻みてえになっちまった。

義康様が死んで、左少将様は家親様を世継ぎにした。これで佐渡守様の思うようになったってことよ。

脱け殻になった左少将様は慶長19年の1月18日に病死した。義康様の死後は病気がちになってな。幕府は2月6日に家親様に山形57万石を相続させた。佐渡守様の思うようになったってこたァ、最上は徳川の言いなりってことよ。

家親様は相続を認められるとすぐさま山形に入封したが、義康様殺害が徳川の調略って気付いてる最上の連中は徳川の息のかかった家親様をよくは思わねえ。

最上のゴタゴタはまだ続くんだが、続きはまた今度だ。

桜鱒はたっぷり塩振らねえとな。

喉が渇いたら辛口の冷やだ。

いずみサン、また。